公職選挙法一二九条、一三八条一項、二三九条一号、三号(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)の合憲性(補足意見がある)
公選法129条,公選法138条1項,公選法239条1号,公選法239条3号
判旨
公職選挙法による戸別訪問の禁止および事前運動の禁止規定は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法14条、15条、21条、31条等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条1項(戸別訪問の禁止)および129条(事前運動の禁止)の規定、ならびにこれらに対する罰則規定が、憲法14条、15条、21条、31条等に違反し違憲とならないか。
規範
選挙の自由と公正を確保するための規制が、表現の自由(憲法21条)等を制限する場合であっても、その目的が正当であり、かつ制限の程度が目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法に違反しない。
重要事実
被告人は、公職選挙法が禁止する戸別訪問(138条1項)および事前運動(129条)を行ったとして、同法違反(239条1号、3号)で起訴された。被告人側は、これらの禁止規定が表現の自由を保障する憲法21条や、法の下の平等を定める14条、適正手続きを定める31条等に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判例(最大判昭44.4.23等)の趣旨に照らせば、戸別訪問の禁止は、意見表明の自由を不当に制限するものではなく、選挙の公正を害する弊害(買収の誘発や生活の平穏の侵害等)を防止するための合理的な規制といえる。また、事前運動の禁止も、選挙の機会均等と過熱防止という正当な目的のための必要最小限の制限であると解される。したがって、これらの規定を本件に適用することは、正当な目的を達成するための合理的手段であり、憲法が許容する範囲内の制限である。
結論
公職選挙法129条、138条1項等の規定は合憲であり、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由を制限する規定(戸別訪問・事前運動禁止)の合憲性を論じる際の確定的判例として用いる。事案の特殊性(個別的な事情)に関わらず、これらの規定自体は一律に合憲とするのが判例の確立した立場であり、答案上は目的の正当性と手段の合理性を簡潔に記述するにとどめるのが一般的である。
事件番号: 昭和59(あ)457 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法138条1項が規定する戸別訪問の禁止は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法21条等の諸規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が選挙運動に際し、投票を依頼する目的で有権者の居宅を連続して訪問した行為(戸別訪問)が、公職選挙法138条1項に抵触するものとして起訴された。…