戸別訪問を禁止した公職選挙法一三八条一項の合憲性
憲法13条,憲法14条,憲法15条,憲法21条,公選法138条1項
判旨
公職選挙法138条1項が戸別訪問を禁止していることは、憲法21条等の諸規定に違反せず、同条を適用して被告人を処罰することも憲法上許容される。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条1項による戸別訪問の禁止が、憲法21条等の精神に照らして合憲か、また同規定を適用して被告人を処罰することが憲法に違反しないか。
規範
選挙の公正を確保し、有権者の自由な意思決定を妨げる弊害(買収、利害誘導、情実に流される等)を防止するという正当な目的のため、戸別訪問を一律に禁止することは、表現の自由に対する必要かつ合理的な制限であり、憲法21条、13条、14条、15条等に違反しない。
重要事実
被告人は、選挙運動に際し、公職選挙法138条1項で禁止されている戸別訪問を行った。弁護人は、当該禁止規定が憲法21条(表現の自由)や14条(平等権)等に違反し、被告人に同条を適用して処罰することは違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判例(昭和44年4月23日大法廷判決等)の趣旨に照らせば、戸別訪問禁止の規定自体が憲法に違反しないことは明らかである。また、被告人が行った具体的な本件行為(戸別訪問)に対して同規定を適用し、刑事罰を科すことも、選挙の公正という公共の福祉を維持するために必要かつ適当な制約の範囲内にある。
結論
公職選挙法138条1項の戸別訪問禁止規定は合憲であり、被告人を処罰した原判決に違憲の点はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由と規制に関する事案において、戸別訪問禁止の合憲性を前提とした論証を行う際に引用する。目的二分論等の厳格な審査基準を用いる学説と対比しつつ、判例が「必要かつ合理的な制限」として一貫して合憲性を維持している点を強調する場面で活用できる。
事件番号: 昭和55(あ)874 / 裁判年月日: 昭和56年6月15日 / 結論: 破棄差戻
公職選挙法一三八条一項の規定は、憲法二一条に違反しない。