処断刑超過による非常上告(幇助犯についての必要的減軽を看過)
刑訴法458条
判旨
従犯(幇助犯)の処断刑の最高額を定めるにあたり、正犯の法定刑の最高額を刑法68条4号に基づき1/2に減軽した額を超えて科した略式命令は、法令に違反し被告人の不利益になるため破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
刑法68条4号に基づく罰金の必要的減軽において、正犯の法定刑の最高額が2万円である場合、従犯に科し得る罰金の最高額はいくらになるか。また、それを超える刑を科した裁判の効力はどうなるか。
規範
刑法68条4号により、罰金を減軽するときは、その多額(最高額)の2分の1を減ずる(すなわち最高額は元の半分となる)。従犯(刑法62条1項)は刑法63条によりその刑を減軽するため、処断刑の上限はこの基準に従って算定されなければならない。
重要事実
被告人は、歯科医師免許のない者が歯科医業を行っていることを知りながら、歯科診療に必要な器具や薬品を計9回にわたり販売し、歯科医師法違反行為を容易ならしめた。原判決(略式命令)は、正犯の法定刑(歯科医師法29条1項1号)が「2万円以下の罰金」であるのに対し、その従犯である被告人に対し、法律上の減軽を適用しながらも、これを超過する「罰金1万8000円」を科した。
あてはめ
本件における正犯の罪(歯科医師法17条違反)に対する罰金の法定刑は、同法29条1項1号により上限が2万円である。被告人は従犯であるため、刑法63条および同法68条4号の規定により、処断刑の上限は法定刑の最高額2万円の2分の1である1万円となる。それにもかかわらず、原略式命令が被告人を罰金1万8000円に処したことは、法律上の減軽の限度を誤った法令違反であり、かつ被告人に不当な不利益を課すものである。
事件番号: 昭和57(さ)3 / 裁判年月日: 昭和57年10月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】従犯(幇助犯)の処断刑は、正犯の刑を減軽した範囲内でなければならず、法定刑の最高額を超える罰金を科した略式命令は、法令に違反し被告人のため不利益なものとして破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、歯科医師免許のないAに対し、診療用ユニット等を譲り渡して歯科医業を幇助した。歯科医師法29…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金1万円に処し、完納できない場合の労役場留置を命ずる。
実務上の射程
修正された法定刑の範囲内で量刑を行うという罪刑法定主義の基本を確認する事案。答案上は、減軽規定(刑法68条)の具体的な計算方法を示す際や、法令の適用誤りによる非常上告または上告理由を検討する際の基礎知識として活用する。
事件番号: 昭和57(さ)1 / 裁判年月日: 昭和57年10月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令が、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超えた罰金刑を科していた場合、法令違反かつ被告人にとって不利益であるため、非常上告に基づき破棄される。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び運転の事実(道路交通法違反)により、松阪簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。…
事件番号: 昭和46(さ)3 / 裁判年月日: 昭和46年12月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】建造物侵入罪の罰金刑の最高額が2,500円であるにもかかわらず、これを超過する5,000円の罰金に処した略式命令は、法令違反であり被告人の不利益になる。そのため、非常上告に基づき原命令を破棄し、適正な法定刑の範囲内で処断し直すのが相当である。 第1 事案の概要:被告人は、金員窃取の目的で歯科診療室…
事件番号: 昭和56(さ)3 / 裁判年月日: 昭和56年7月17日 / 結論: 破棄自判
舞台上で演じられた男女二組のシヨーに照明をあてて公然わいせつの犯行を容易ならしめた所為は、一個の公然わいせつ行為を幇助したものである。
事件番号: 平成1(さ)3 / 裁判年月日: 平成元年10月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令において、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超える罰金に処したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益な裁判であるから、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和62年11月5日、酒気を帯びた状態で普通貨物自動車を運転した。これに対し原略式命…