覚せい剤のいわゆる自己使用行為及び自己使用目的の所持行為を処罰することと憲法一一条、一三条、九七条
憲法11条,憲法13条,憲法97条,覚せい剤法41条の2第1項1号,覚せい剤法41条の2第1項3号
判旨
覚せい剤の自己使用および自己使用目的の所持を処罰する覚せい剤取締法の規定は、公共の福祉による正当な制限として、憲法11条、13条、97条に違反しない。
問題の所在(論点)
覚せい剤の自己使用および自己使用目的の所持を禁止・処罰することが、自己決定権や幸福追求権(憲法13条等)を侵害し違憲ではないか。いわゆる「自己加害」的な行為に対する刑事罰の可否が論点となる。
規範
人権の保障も絶対無制約なものではなく、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける。薬物等の自己使用・所持の禁止については、それが個人の生命・身体の危険のみならず、社会全般に及ぼす害悪が甚大である場合には、憲法13条(幸福追求権)等の趣旨に照らしても、公共の福祉に基づく合理的な制限として合憲とされる。
重要事実
被告人は、覚せい剤の自己使用行為および自己使用目的の所持行為により、覚せい剤取締法41条の2第1項1号および3号(当時の規定)の違反に問われた。弁護人は、自己使用等の自傷的行為を処罰することは、憲法11条(基本的人権の享有)、13条(個人の尊重・幸福追求権)、97条(基本的人権の本質)に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判旨は、先行する大法廷判決等の趣旨を引用し、覚せい剤の自己使用・所持に対する処罰規定が憲法各条に違反しないことを確認した。具体的には、覚せい剤の濫用が個人の心身を毀損するだけでなく、幻覚や妄想等による他人への危害、さらには社会秩序全体の破壊につながる蓋然性が極めて高いことから、当該制限は「公共の福祉」に基づく正当な目的によるものであり、手段としても合理的であると判断される。
結論
覚せい剤の自己使用および自己使用目的の所持を処罰する規定は、憲法11条、13条、97条に違反せず合憲である。
実務上の射程
自己決定権(13条)を論じる際、いわゆる「自己加害的行為」であっても、外部的影響(パターナリスティックな制約を超えた社会的法益への侵害)が強い場合には公共の福祉による制限が肯定されるという文脈で活用する。覚せい剤事犯の処罰根拠を論理付ける際の確立した判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和48(あ)2557 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚醒剤の使用に対する処罰規定は、輸入、輸出、所持、製造等の他態様と比較して常に犯情が軽いとは限らないため、憲法13条(自己決定権等)や14条(法の下の平等)に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が覚醒剤取締法違反(使用等)に問われた事案において、弁護人は覚醒剤の使用が輸入、輸出、所持、…