高等裁判所が言い渡した判決に対する特別抗告申立を不適法棄却した事例
判旨
刑事裁判の判決に対しては、刑法・刑事訴訟法上の不服申立てとして特別抗告をすることは認められず、また上告の意思が明確に否定されている場合には上告として扱うこともできないため、当該申立ては不適法である。
問題の所在(論点)
高等裁判所が言い渡した「判決」に対し、特別抗告を申し立てることが認められるか。また、上告の意思がないことを明言している場合に、当該申立てを上告申立てとみなして受理することができるか。
規範
刑事訴訟法上、不服申立ての対象が「判決」である場合、それに対する救済手段は原則として控訴または上告に限られる。最高裁判所に直接不服を申し立てる「特別抗告」は、裁判所の「決定」または「命令」に対して、憲法違反や判例相反がある場合に例外的に認められる手続(刑訴法405条、433条参照)であり、判決を対象とすることはできない。また、申立人が上告の意思がないことを明示している場合には、申立ての性質を上告と解釈して救済する余地もない。
重要事実
被告人は道路交通法違反、有印私文書偽造、同行使の罪に問われ、昭和55年5月30日に大阪高等裁判所で判決を言い渡された。被告人はこの「判決」に対し、最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。なお、訴訟記録によれば、申立人は本件申立てによって上告を申し立てる趣旨ではない旨を明示的に陳述していた。
あてはめ
本件における不服申立ての対象は大阪高等裁判所の「判決」である。刑事訴訟法の規定上、判決に対する不服申立ては上告によってなされるべきであり、決定・命令を対象とする特別抗告の道は開かれていない。したがって、本件特別抗告は手続上不適法である。さらに、申立人は自ら「上告を申し立てる趣旨ではない」と陳述している。不服申立ての性質は申立人の合理的な意思に基づいて解釈されるべきであるが、本件では上告の意思が明確に否定されている以上、職権でこれを上告として扱うことは相当ではない。
結論
本件申立ては不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
本決定は、不服申立ての対象(判決か決定・命令か)と申立手段の整合性を厳格に求めたものである。答案作成上は、刑事訴訟の基本的構造(判決に対する上告、決定に対する抗告)を再確認する際に参照される。また、申立人の意思表示に反して不服申立ての種類を読み替えることはできないという、申立人の意思尊重・処分権主義的な側面を示す事例として位置づけられる。
事件番号: 昭和57(す)156 / 裁判年月日: 昭和57年8月11日 / 結論: 棄却
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最高裁判所に對しては、刑訴應急措置法第一八條のように、特に最高裁判所に抗告を申立てることを許された場合の外、抗告をすることは許されないものであることは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(つ)第七號事件同年一二月八日大法廷決定參照)