判例違反の主張が前提を欠くとされた事例
道交法70条,道交法119条2項,道交法119条1項9号
判旨
自動車運転過失致死傷罪等の過失犯の成立には、単なる抽象的な危惧感では足りず、具体的な注意義務に違反し他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転したという具体的な過失の認定が必要である。
問題の所在(論点)
過失犯における注意義務違反の認定において、単に漠然とした危険を招いたことのみで足りるのか、あるいは具体的な注意義務違反の認定が必要か。
規範
過失犯の成立における注意義務違反の有無は、行為者が結果発生の具体的予見可能性を有し、かつ、その結果を回避すべき具体的な注意義務を怠ったか否かによって判断される。具体的には、当該状況下において他人に危害を及ぼす具体的危険性のある方法で行為に及んだことが認められなければならない。
重要事実
被告人は自動車を運転中、他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転し、具体的な注意義務に違反した過失によって他人に被害を与えたとして起訴された。原審(二審)は、被告人において自動車運転上の具体的な注意義務に違反した過失があることを認定し、有罪判決を言い渡した。これに対し、被告人側が判例違反等を理由に上告した事案である。
あてはめ
原判決の判文によれば、被告人が「具体的な注意義務に違反した過失によって他人に危害を及ぼすような速度と方法で自動車を運転した」ことが明白に認定されている。これは、単なる抽象的な過失の想定ではなく、具体的な運転態様と結果回避義務の懈怠を特定したものであるといえる。したがって、過失の認定に欠けるところはないと解される。
結論
被告人の具体的な注意義務違反を認定した原判決に誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
新過失論の立場から、具体的予見可能性に基づく具体的注意義務の違反が必要であることを確認する。答案上は、過失の有無を論じる際に「具体的予見可能性」と「具体的結果回避義務」を分節化して検討すべきことを示す。特に自動車運転死傷罪や業務上過失致死傷罪の事案において、具体的な運転操作の不適切さを摘示する際の論拠となる。
事件番号: 昭和45(あ)95 / 裁判年月日: 昭和46年5月13日 / 結論: 棄却
道路交通法七〇条以外の同法各案に定められている運転者の義務違反の罪が成立する場合には、その行為が同時に右七〇条違反の罪の構成要件に該当しても、同条違反の罪は成立しない。
事件番号: 昭和44(あ)2533 / 裁判年月日: 昭和45年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に対する公判期日の通知が適切になされている場合、通知が全くない場合を前提とする判例違反の主張は上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が判例違反を理由として上告を申し立てた事案。弁護人が引用した判例は、被告人に対して公判期日の通知を全く行わなかったケースに関するものであったが、本件に…
事件番号: 昭和51(あ)1658 / 裁判年月日: 昭和52年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条2号にいう「判例」とは、原判決の宣告よりも前になされた最高裁判所の判例を指し、原判決後になされたものはこれに当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原判決に判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、上告人が引用した最高裁判所の判例は、いずれも原判決の宣告後に出されたものであ…