公職選挙法一二九条の合憲性(憲法二一条、三一条)
憲法21条,憲法31条,公選法129条
判旨
公職選挙法129条が定める「選挙運動」の意義は、憲法31条が求める刑罰法規の明確性の原則に照らして十分に明確であり、同条による選挙運動の制限は憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法129条にいう「選挙運動」の意義は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性を欠くか。2. 同条による選挙運動の制限は、憲法21条に違反するか。
規範
1. 刑罰法規が憲法31条に違反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読み取れるかによって判断される。2. 選挙の公正を確保するための選挙運動の期間制限(公職選挙法129条)は、表現の自由(憲法21条)を不当に侵害するものではない。
重要事実
被告人らは、公職選挙法129条が禁じる選挙期間外の選挙運動を行ったとして、同法221条1項1号等に基づき起訴された。これに対し被告人側は、同法129条にいう「選挙運動」の概念が不明確であり、罪刑法定主義(憲法31条)に反するとともに、表現の自由(憲法21条)を侵害する違憲な規定であると主張して上告した。
あてはめ
1. 「選挙運動」とは、判例上「特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に有利な運動をすること」と解されており、その意義は社会通念に照らして客観的に画定可能である。したがって、一般人の理解において適用範囲が不明確であるとはいえず、憲法31条に反しない。2. 選挙の公正を確保し、過熱した運動による弊害を防止するという立法目的は正当であり、期間制限という手段も合理的な制約として、憲法21条の許容する範囲内にある。
結論
公職選挙法129条は憲法21条、31条に違反しない。したがって、同条に基づき被告人らを処罰することは合憲である。
実務上の射程
憲法31条(明確性の原則)の論点において、本判決は既存の判例(最大判昭44.4.23等)を踏襲し、公選法の「選挙運動」概念が合憲であることを再確認したものである。答案上は、刑罰法規の明確性が問題となる場面で、一般人の理解可能性を基準とする判断枠組みを提示する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和57(あ)878 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法129条による選挙運動期間の制限は、選挙の公正を確保し、不当な競争を防止する目的から、表現の自由を保障した憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、公職選挙法129条が定める選挙運動期間外に選挙運動を行ったとして同法違反で起訴された。これに対し、被告人側は、同条の規定が表現…