一 公職選挙法(昭和三七年第一一二号による改正前のもの)第二五二条は、選挙権、被選挙権の停止につき、その法律上の要件、基準を明確に定めていると解される。 二 公職選挙法第二三九条第一号の罪の構成要件である同法第一二九条にいう選挙運動とは、特定の選挙の施行が予測せられ或は確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定して居るときは固より、その立候補が予測せられるときにおいても、その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的を以て、直接または間接に必要かつ有利な周施、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすことをいうものであつて、その意義が不明確であるとはいえない。
一 公職選挙法(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)第二五二条にいう選挙権、被選挙権停止の要件、基準は不明確か 二 公職選挙法第二三九条第一号の罪の構成要件である同法第一二九条にいう選挙運動の意義は不明確か
公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前のもの)252条,公職選挙法239条1号,公職選挙法129条
判旨
公職選挙法に定義規定のない「選挙運動」の意義は、特定の選挙につき特定の候補者の当選を目的とした、直接・間接に必要かつ有利な諸般の行為を指すと解され、憲法31条に違反しない。また、参政権を制限する同法252条の規定も、要件が明確に定められており憲法31条、21条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法における「選挙運動」の定義の欠如が、憲法31条(罪刑法定主義・明確性の原則)に違反するか。2. 同法252条による選挙権・被選挙権の停止規定が憲法31条、21条に違反するか。
規範
1. 「選挙運動」とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として(目的要件)、投票を得させるために直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘、誘導その他諸般の行為をなすこと(行為要件)をいう。2. 法律上の要件が明確であり、裁判所の裁量範囲が量刑の範囲内にとどまる限り、刑罰規定や参政権制限規定が憲法31条、21条に違反することはない。
重要事実
被告人らは、特定の選挙において立候補を予定していたAの当選を図る目的で、立候補の届出がなされる前に選挙運動を依頼し、その報酬として金員を供与した。この行為が、事前運動の禁止を定めた公職選挙法129条、239条1号に違反するとして起訴された。被告人側は、同法における「選挙運動」の意義が不明確であり憲法31条に違反する、また事前運動の一律禁止は憲法21条に違反するなどと主張して争った。
あてはめ
1. 公職選挙法を通読すれば、選挙運動の意義は、特定の候補者を当選させる目的でなされる、投票を促すための直接・間接の有利な行為であると一義的に理解できる。したがって、定義規定がなくとも不明確とはいえず、憲法31条に反しない。2. 同法252条は、選挙権停止の要件や期間を法律上明確に規定しており、情状による期間短縮等の裁判所の裁量も一般犯罪の量刑判断と同様の性質である。したがって、憲法31条や21条が求める明確性の要件を満たしている。
結論
公職選挙法129条、239条1号、および252条の各規定は憲法31条、21条に違反しない。
実務上の射程
司法試験等の答案においては、公選法上の「選挙運動」の定義を引用する際のスタンダードな基準として用いる。また、定義規定がない場合であっても、法の全体構造からその意義が客観的に把握可能であれば、明確性の原則(憲法31条)に反しないとする論理構成のモデルとなる。
事件番号: 昭和44(あ)543 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日 / 結論: 棄却
所論は、公職選挙法一二九条、二三九条一号の各規定は、構成要件の内容が全く不明確で実質的に白地であるから、憲法三一条に違反し無効であると主張するが、公職選挙法における選挙運動の意義が所論のように不明確であるとはいえないし、同法一二九条はこの選挙運動を一定期間においてのみすることを許し、同法二三九条はこれに違反した者を処罰…