判旨
公職選挙法にいう「選挙運動」とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得るため直接または間接に必要かつ有利な行為をすることをいい、その定義は明確であって憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法上の「選挙運動」の意義が、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に反しないか。
規範
「選挙運動」とは、①特定の選挙の施行が予測されまたは確定し、かつ②特定の人が立候補することが予測されまたは確定した場合において、③その人を当選させるため、投票を得もしくは得させる目的をもって、④直接または間接に必要かつ有利な周施、勧誘、誘導その他諸般の行為をすることをいう。政治活動とされる行為であっても、上記要件に該当するものは選挙運動に当たる。
重要事実
被告人は、公職選挙法129条(選挙運動期間の制限)に違反し、事前の選挙運動を行ったとして同法239条1号に基づき起訴された。これに対し被告人側は、同法における「選挙運動」の概念が極めて曖昧であり、政治活動との区別が困難であるから、構成要件が実質的に白地で明確性を欠き、憲法31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
公職選挙法を全体として通読すれば、選挙運動の意義は、特定の選挙・候補者を前提とした当選目的の諸般の行為であると一義的に理解できる。また、大審院以来の長年の判例の集積によってその意義は確立されている。したがって、通常の理解力を持つ者が、何が禁止される行為であるか(選挙運動と政治活動の境界)を判断することは可能であり、構成要件が白地であるとか、基準が曖昧であるとは認められない。
結論
本件各規定は、選挙運動の意義が明確であるため、憲法31条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙犯罪に関する重要判例であり、実務上および答案上、選挙運動の定義(目的・時期・態様)を記述する際の絶対的な規範となる。政治活動との峻別が問題となる事案では、本規範を提示した上で、被告人の行為に「特定の選挙」「特定の候補者」「当選目的」が認められるかを事実から具体的に拾う必要がある。
事件番号: 昭和42(あ)2594 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法129条及び239条1号にいう「選挙運動」の意義は不明確ではなく、罪刑法定主義を定める憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、公職選挙法129条(選挙運動の期間制限)に違反して選挙運動を行ったとして、同法239条1号により処罰された。これに対し、上告人は「選挙運動」の意義が…