弁護人遊田多聞の上告趣意第二点は、公職選挙法第一二九条、第二三九条の各規定は、憲法第三一条に違反し、同第九八条第一項によつて無効であると主張するが、公職選挙法における選挙運動の意義が所論の如く不明確であるとはいえないし、同第一二九条はこの選挙運動を一定の期間においてのみなすことを許し、同第二三九条はこれに違反した者を処罰することを規定しているのであるから、右各法条には罪の構成要件が規定されていないとかまたは不明確であるということはできない(昭和三八年(あ)第九八四号同年一〇月二二日第三小法廷決定、刑集一七巻九号一七五五頁参照)。
公職選挙法第二三九条の罪の構成要件である同法第一二九条にいう選挙運動の意義は不明確か
公職選挙法129条,公職選挙法239条
判旨
公職選挙法129条及び239条にいう「選挙運動」の意義は不明確ではなく、罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法129条、239条にいう「選挙運動」の概念は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に反するか。
規範
刑罰法規が憲法31条に違反しないためには、その構成要件が明確であることを要する。公職選挙法における「選挙運動」の意義は、法全体の趣旨や目的から客観的に画定可能であり、処罰範囲が不明確であるとはいえない。
重要事実
被告人は、公職選挙法129条(選挙運動期間の制限)に違反して選挙運動を行ったとして、同法239条に基づき起訴された。弁護人は、公職選挙法上の「選挙運動」の意義が不明確であり、罪の構成要件が規定されていない、あるいは不明確であるとして、罪刑法定主義を定める憲法31条に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
公職選挙法において、選挙運動とは「特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」を指すと解される。このような意義は、判例・実務上も確立されており、一般人の理解からかけ離れたものではない。したがって、同法129条がこの選挙運動を一定の期間においてのみ許容し、同法239条がこれに違反した者を処罰すると規定していることは、罪の構成要件を十分に画定しているといえる。
結論
公職選挙法129条及び239条は憲法31条に違反しない。
実務上の射程
選挙法規の合憲性を肯定したリーディングケースの一つ。答案上は、不明確ゆえに無効の理論(憲法31条)を論じる際、公職選挙法の「選挙運動」については、法解釈によってその意義が確定できるため合憲であるとする論証の根拠として用いる。
事件番号: 昭和41(あ)190 / 裁判年月日: 昭和41年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法にいう「選挙運動」とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得るため直接または間接に必要かつ有利な行為をすることをいい、その定義は明確であって憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、公職選挙法129条(選挙運動期間の制限)に違反し、事前の選挙運動を行った…