おとり捜査の違憲(一三条、三一条違反)主張が欠前提とされた事例
憲法13条,憲法31条
判旨
警察官が職務質問に際し、不審な挙動を示した者のポケットの外側を軽くなで、形状を確認した上で所持品を取り出させた行為は、証拠収集過程において重大な違法があったとは認められない。
問題の所在(論点)
警察官による職務質問に伴う所持品検査(ポケットの外側をなでる行為等)が、強制処分にあたらないか、あるいは任意捜査の限界を逸脱した違法な捜査として、憲法13条、31条、35条等に違反しないか。
規範
所持品検査において、強制に至らない程度の有形力の行使は、職務質問(警察官職務執行法2条1項)に付随する行為として、捜査の必要性、緊急性、及び個人の権利侵害の程度を考慮した比例原則の範囲内で許容される。本件決定は、証拠収集過程の適法性判断において、憲法13条、31条、35条に違反するような重大な違法がないかを実質的に判断している。
重要事実
被告人が警察官による職務質問を受けた際、不審な挙動を示したため、警察官がその衣服のポケットの外側を軽くなでて内容物の形状を確認した。その後、被告人から覚せい剤の提出を受け、これを差し押さえた(なお、詳細な事案の経緯や「なでる」行為の具体的態様については、決定文本文からは直接引用されていないが、弁護側の違憲主張に対し「証拠収集過程に違法な捜査が介在した証跡はない」と判断されている)。
あてはめ
最高裁は記録を精査した結果、本件の覚せい剤の差押えが違法に行われたことを疑わせる証跡は認められないと判断した。これは、職務質問に付随して行われた一連の行為(ポケットの外側からの触診等)が、事案の性質や不審事由に照らして相当な範囲にとどまっており、公権力の恣意的な行使や私生活の平穏を不当に侵害するものではないと評価したものである。
事件番号: 昭和51(あ)865 / 裁判年月日: 昭和53年9月7日 / 結論: 破棄差戻
一 職務質問に附随して行う所持品検査は所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度…
結論
本件捜査過程に違法な捜査が介在したとは認められず、憲法違反等の上告理由は前提を欠くため、上告は棄却される。
実務上の射程
本決定は、米沢郵便局事件(最大判昭44.12.24)等の系譜に属し、職務質問に際して許容される「付随的行為」の限界を示すものである。答案上では、所持品検査の適法性を論じる際、強制処分に至らない程度の「なでる」等の行為が、必要性・緊急性・相当性の観点から許容されることを基礎づける際の参考となる。ただし、本決定自体は理由不備を理由とした簡潔な決定であるため、具体的な考慮要素の展開には「米沢郵便局事件」の規範を用いるのが一般的である。
事件番号: 平成8(あ)867 / 裁判年月日: 平成8年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】違法に収集された証拠であっても、証拠収集の手続に憲法上の適正手続の保障を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の見地から不相当と認められない限り、その証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:警察官らが被告人に対して所持品検査を実施した。当該所持品検査の…