刑事補償の請求が認容された事例
刑事補償法1条1項,刑事補償法4条1項,刑事補償法4条2項,刑事補償法16条前段
判旨
刑事補償法1条1項にいう「未決の拘禁」には、無罪となった公訴事実に直接基づく拘禁だけでなく、別件の不起訴事実に基づく拘禁であっても実質上は無罪事実についての拘禁と認められる期間を包含する。
問題の所在(論点)
刑事補償法1条1項の「未決の拘禁」の範囲に、不起訴となった別件の被疑事実に基づく勾留期間のうち、実質的に無罪となった本案事実の捜査に充てられていた期間が含まれるか。
規範
刑事補償法1条1項の「未決の拘禁」には、無罪となった公訴事実に基づく拘禁のみならず、不起訴となった事実に係る拘禁であっても、その期間内に実質上、無罪となった事実についての取調べ等が行われるなど、当該拘禁が無罪事実についての拘禁であると認められる部分が含まれる。
重要事実
請求人は動力電線窃盗の被疑事実(別件)で逮捕・勾留された後、排水用鉛管窃盗(本案)で起訴・勾留された。本案について最高裁で無罪が確定したため刑事補償を請求した。別件の勾留期間中(昭和46年1月24日以降)において、請求人は既に無罪となった本案事実についての取調べを受けていた。一方で、第1審判決言渡当日(昭和47年11月7日)については、実際に拘禁された事実はなかった。
あてはめ
請求人の受けた未決拘禁のうち、別件逮捕から勾留初期(1月19日から23日)までは無罪事実に基づかないため補償対象外である。しかし、別件勾留中の1月24日以降は無罪となった事実の取調べを受けており、実質上は無罪事実による勾留と認められる。よって、この期間と本案起訴後の拘禁期間(2月4日の保釈まで)を合わせた12日間が補償対象となる。なお、実際に拘禁されていない第1審判決当日は対象に含まれない。
結論
別件勾留期間中であっても、実質的に無罪事実の取調べが行われた期間については、刑事補償法1条1項の拘禁に含まれるとして補償を認める。
実務上の射程
刑事補償の請求において「本案事実と別件拘禁の実質的同一性」を判断する際の基準となる。実務上は、勾留の理由となった事実と、実際に行われた取調べ内容との乖離を具体的事実(取調べの状況等)に基づき主張・立証する必要がある。
事件番号: 昭和48(も)1 / 裁判年月日: 昭和48年12月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事事件において無罪判決が確定した場合、刑事補償法1条1項に基づき、未決勾留の日数に応じた補償金を国は交付しなければならない。 第1 事案の概要:請求人は、公文書毀棄被告事件について起訴され、第一審および第二審で有罪判決を受けたが、最高裁判所にて原判決が破棄され、無罪判決が言い渡されて確定した。請…