正当防衛に関する判例の違反を主張する論旨を欠前提で処理した事例
刑法36条,刑訴法405条2号
判旨
喧嘩闘争において、一場面のみを切り離して判断するのではなく、闘争の全過程を総合的に考慮した上で正当防衛の成立を否定した原審の判断を相当とした。
問題の所在(論点)
喧嘩等の継続的な闘争状態において、特定の瞬間における反撃行為について、正当防衛(刑法36条1項)ないし過剰防衛(同条2項)が成立するか。また、その判断にあたり闘争の全過程を考慮すべきか。
規範
正当防衛(刑法36条1項)の成否については、単に侵害の生じた一場面のみを形式的に取り出すのではなく、事案の端緒から終了に至るまでの一連の経過を全体として観察し、侵害の急迫不正性や防衛の意思、反撃行為の相当性を判断すべきである。
重要事実
被告人は「喧嘩闘争」に及んだが、その一場面において相手方からの攻撃に対し反撃行為を行った。被告人は当該場面における防衛行為が正当防衛または過剰防衛に該当すると主張したが、原審は闘争全体を通じた状況からこれを否定した。本決定の原文には具体的な闘争のきっかけや行為の詳細は記されていないが、一連の喧嘩の流れがあったことが前提とされている。
あてはめ
記録によれば、原判決は喧嘩闘争の特定の一場面のみを孤立させて評価しているわけではなく、事案の全過程を視野に入れて検討している。このような総合的な観察に基づき正当防衛および過剰防衛の成立を否定した判断に、判例違反や不合理な点は認められない。したがって、被告人の主張は前提を欠くものといえる。
結論
本件喧嘩闘争の状況に鑑み、正当防衛および過剰防衛の成立は認められない。
実務上の射程
「喧嘩」事案における急迫不正性の判断枠組みとして重要である。互いに攻撃を予期し、かつそれに応じる意思で闘争に及んだ場合、一連の経過を全体として評価することで、侵害の急迫性や防衛の意思を否定する論法として機能する。答案上は、事案の経過を時系列で整理し、闘争の全過程を検討したことを示した上で結論を導く際に用いる。
事件番号: 昭和49(あ)2786 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 破棄差戻
急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為であるかぎり、同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであつても、刑法三六条の防衛行為にあたる。