法令の適用に誤りがあるが刑法四一一条を適用すべきものとは認められないとされた事例
刑訴法411条
判旨
法律の改正があった場合、旧法と新法の罰条を比較して軽微なものを適用すべきであり、旧法適用の判示を欠くことや刑法6条の誤用は法令の適用誤りに該当するが、事案の性質に照らし原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない場合には上告棄却となる。
問題の所在(論点)
判決後に法律の改正があった事由等に関し、原判決が適用すべき罰条の特定を誤り、または刑法6条の適用を誤った場合において、刑訴法411条1号(法令違反)を理由とする職権破棄を行うべき「著しく正義に反する」事態に該当するか。
規範
刑訴法411条に基づく職権破棄の可否については、原判決に法令の適用の誤りがある場合であっても、事案の諸般の事情(事案の重大性、被告人の不利益の程度、処罰の必要性等)を総合的に勘案し、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるか否かという観点から判断される。
重要事実
第一審判決は、公職選挙法の改正(昭和50年法律63号)が行われた事案において、改正前の罰条を適用する旨を判示せず、かつ刑法6条(刑の変更)を適用した。しかし、実際には適切な経過措置の判断や条文の特定に誤りがあった。原判決もこの法令適用の誤りを是正しないまま第一審判決を維持した。被告人側は法令違反等を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、第一審および原判決には旧公職選挙法の罰条適用の明示漏れや、刑法6条の適用誤りという明確な法令適用の誤りが認められる。しかし、当該事案の内容や処罰の必要性、実質的な刑の妥当性といった「事案の諸般の事情」を考慮すると、形式的な適用誤りがあるとしても、その結果が著しく不当であるとまではいえない。したがって、原判決を維持しても正義に反する状態には至らないと解される。
結論
本件各上告を棄却する。法令の適用の誤りは認められるが、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
実務上の射程
法令適用の誤りが認められる場合であっても、刑訴法411条の職権破棄は裁量的な性格を有し、実質的な正義の観点から破棄の必要性が判断されることを示す。答案上、形式的な法令違反がある場面で、あえて結論を維持する論理(「著しく正義に反するとまではいえない」)を用いる際の根拠となる。
事件番号: 昭和52(あ)188 / 裁判年月日: 昭和52年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の改正があった場合において、旧法を適用すべき事案に誤って新法を適用した法令適用の違法があるとしても、直ちに刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人は昭和50年3月8日に公職選挙法違反の犯行に及んだ。その後、昭和50年法律第63号により同法が改正…