昭和五〇年法律六三号による改正前の公職選挙法を適用すべきであるのに、新法を適用した違法があるが刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められないとされた事例(罰金刑選択)
刑訴法411条1号
判旨
判決後の法改正により処罰規定に変更があった場合、経過措置の規定に従い旧法を適用すべきである。もっとも、誤って新法を適用した法令適用の誤りがあっても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、刑訴法411条による職権破棄の対象とはならない。
問題の所在(論点)
公職選挙法違反の犯行後に法改正があった場合、どの時点の法令を適用すべきか。また、下級審が適用すべき法令を誤った場合、最高裁判所は刑訴法411条に基づき職権で原判決を破棄すべきか。
規範
刑罰法令の改正があった場合、附則等の経過措置に従って適用すべき法令を決定すべきである。また、下級審判決に法令適用の誤りがある場合であっても、刑訴法411条により職権で原判決を破棄するためには、その違法が判決に影響を及ぼし、かつ、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められることが必要である。
重要事実
被告人は、昭和50年4月12日に公職選挙法違反の犯行に及んだ。その後、同年法律第63号による同法の改正が行われた。第一審判決および原判決は、改正法の附則4条により旧法(改正前の公職選挙法243条3号、142条1項)を適用すべき事案であるにもかかわらず、誤って改正後の新法を適用して被告人を処断した。
あてはめ
本件犯行時は昭和50年4月12日であり、改正法附則4条の規定に照らせば、旧法を適用すべき事案である。したがって、新法を適用した第一審およびこれを看過した原判決には法令適用の違法が認められる。しかし、旧法と新法の内容を比較検討した結果(具体的な差異は判決文からは不明)、当該違法がいまだ判決に影響を及ぼし、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
本件上告を棄却する。適用法令の誤りという違法はあるが、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
実務上の射程
刑事訴訟法における職権破棄(411条)の判断枠組みを示す。法令適用の誤りがあるからといって直ちに破棄されるわけではなく、結論の妥当性や正義の観点から破棄の必要性が限定的に解釈される実務上の運用を認めたものである。答案上は、法令適用の誤りがある場合の救済の限界を論じる際に参照し得る。
事件番号: 昭和52(あ)287 / 裁判年月日: 昭和52年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の改正があった場合、旧法と新法の罰条を比較して軽微なものを適用すべきであり、旧法適用の判示を欠くことや刑法6条の誤用は法令の適用誤りに該当するが、事案の性質に照らし原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない場合には上告棄却となる。 第1 事案の概要:第一審判決は、公職選挙法の…