第一審判決には、公職選挙法二二一条一項一号のほか同条三項一号を適用した違法があるが、原判決が支持する第一審判決の被告人に対する懲役一年、執行猶予五年の科刑は正当な処断刑の範囲内にあり、被告人の本件犯罪事実およびその情状等本件事案の具体的事情を検討すれば、右違法は、いまだ第一審判決および原判決を破棄しなければ著るしく正義に反すると認めるには至らない。
第一審判決が誤つて公職選挙法二二一条三項一号を適用した場合と刑訴法四一一条一号適用の要否
公職選挙法221条3項1号,刑訴法411条1号
判旨
判決に法令適用の誤りという違法がある場合であっても、科刑が正当な処断刑の範囲内にあり、諸般の事情に照らして破棄しなければ著しく正義に反すると認められない限り、上告棄却を維持すべきである。
問題の所在(論点)
判決に法令適用の誤り(公職選挙法の誤適用)がある場合、その違法が直ちに刑訴法411条所定の破棄事由(著しく正義に反すると認めるとき)に該当するか。
規範
刑訴法411条1号に基づき、判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある場合であっても、それが「著しく正義に反すると認めるとき」に該当しない限り、職権による破棄はなされない。具体的には、科刑が正当な処断刑の範囲内にあり、被告人の犯罪事実や諸情状等の具体的状況に照らして判断される。
重要事実
被告人は公職選挙法違反の罪で起訴され、第一審判決は懲役1年、執行猶予5年を言い渡した。しかし、第一審は法令の適用において、本来適用すべき同法221条1項1号に加え、誤って同条3項1号をも適用するという違法を犯していた。原判決もこの第一審判決を支持したため、法令適用の誤りが存続したまま上告審に至った。
あてはめ
本件において、第一審判決が公職選挙法221条3項1号を誤って適用したことは法令違反にあたると認められる。しかし、言い渡された懲役1年、執行猶予5年という刑は、正しい法令適用に基づく処断刑の範囲内(懲役3年以下)に収まっている。また、被告人の犯罪事実の内容や、記録上現れた情状等の具体的諸事情を総合的に検討しても、右の法令適用の誤りは、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは評価できない。
結論
判決に法令適用の誤りがあるとしても、科刑が正当な範囲内にあり著しく正義に反するとは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法411条(上告審の職権破棄)の限定的な運用を示す実務上の先例。法令適用の誤り(誤適用)が存在しても、直ちに破棄されるわけではなく、結論としての量刑が妥当である限り、正義の観点から維持される可能性があることを示している。
事件番号: 昭和43(あ)76 / 裁判年月日: 昭和43年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】立候補届出前の買収行為に公職選挙法221条3項を適用した法令適用の誤りがあっても、宣告刑が正当な処断刑の範囲内であり、諸般の事情に照らして「著しく正義に反する」と認められない限り、原判決を破棄すべきではない。 第1 事案の概要:被告人が公職の候補者として立候補の届出をするより前に行った行為に対し、…