昭和五〇年法律六三号による改正前の公職選挙法を適用すべきであるのに、新法を適用した違法があるが、いまだ刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められないとされた事例(罰金刑選択事件)
刑訴法411条1号
判旨
法律の改正があった場合において、旧法を適用すべき事案に誤って新法を適用した法令適用の違法があるとしても、直ちに刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
問題の所在(論点)
旧法を適用すべき事案について誤って改正後の法律を適用した法令適用の違法が存在する場合、刑訴法411条に基づき職権で原判決を破棄すべきか。
規範
第一審判決が適用すべき旧法に代えて誤って新法を適用し、控訴審がこれを看過したという法令適用の違法がある場合であっても、それが判決に影響を及ぼすべき重要な事項でないとき、または著しく正義に反すると認められないときは、刑訴法411条による職権破棄の対象とはならない。
重要事実
被告人は昭和50年3月8日に公職選挙法違反の犯行に及んだ。その後、昭和50年法律第63号により同法が改正されたが、同法附則4条により改正前の規定が適用されるべき事案であった。しかし、第一審判決は誤って改正後の新法を適用し、原判決(控訴審)もこの誤りを看過して第一審判決を維持した。
あてはめ
本件では、犯行時に施行されていた旧公職選挙法221条1項5号および239条1号を適用すべきところ、第一審および原審は誤って改正後の新法を適用した。しかし、上告審が職権で調査した結果、この法令適用の誤りは認められるものの、当該違法が判決の結果を左右するほど重大である、あるいは原判決を維持することが著しく正義に反するとまではいえない。したがって、職権破棄の要件を定めた刑訴法411条を適用するまでの必要性は認められないと評価される。
結論
法令適用の誤りという違法は存在するが、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき事由にはあたらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法411条の職権破棄事由の解釈において、単なる法令適用の違法があるだけでは足りず、破棄しなければ著しく正義に反するなどの特段の事情が必要であることを示す。特に新旧法の適用誤りという形式的な違法があっても、実質的な妥当性が保たれている場合には、上告審が破棄を抑制する実務上の運用を裏付ける判例として引用できる。
事件番号: 昭和52(あ)287 / 裁判年月日: 昭和52年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の改正があった場合、旧法と新法の罰条を比較して軽微なものを適用すべきであり、旧法適用の判示を欠くことや刑法6条の誤用は法令の適用誤りに該当するが、事案の性質に照らし原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない場合には上告棄却となる。 第1 事案の概要:第一審判決は、公職選挙法の…