未決誤算入の原判決を判例違反として破棄した事例
刑法21条
判旨
検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく裁量的算入の余地はなく、検察官の控訴申立以降の日数を判決で算入することは許されない。
問題の所在(論点)
検察官が控訴を申し立てた場合において、控訴裁判所が刑法21条に基づき、検察官の控訴申立後の未決勾留日数を裁量により本刑に算入すること(判決による算入)の可否。
規範
検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は、刑訴法495条2項1号により、判決確定時に当然に全部が本刑に通算される。この場合、控訴裁判所には当該日数を刑に算入するか否かの裁量権は委ねられておらず、刑法21条に基づき、判決においてその全部または一部を本刑に算入する旨を言い渡すことはできない。
重要事実
被告人は第一審で懲役7年の判決を受け、昭和51年2月9日に控訴を申し立てた。これに対し検察官も同月12日に控訴を申し立てた。原審(控訴審)は、両者の控訴を棄却するとともに、控訴審における未決勾留日数のうち440日を、刑法21条の裁量により第一審の刑に算入する旨の判決を言い渡した。検察官は、検察官が控訴した後の未決勾留日数を裁量算入した点は違法であるとして上告した。
あてはめ
本件では検察官も控訴を申し立てているため、検察官の控訴申立日である昭和51年2月12日以降の未決勾留日数は、刑訴法495条2項1号により当然に通算されるべきものである。控訴裁判所が刑法21条により裁量算入できる限度は、被告人のみが控訴を申し立てていた期間(昭和51年2月9日から検察官の控訴申立前日である同月11日までの3日間)に限られる。原審がこれを超えて440日を算入した判断は、法定の通算規定がある場合に裁判所の裁量権を否定する判例の趣旨に反し、法の適用を誤ったものといえる。
事件番号: 昭和48(あ)1145 / 裁判年月日: 昭和48年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が上訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく算入の裁量は認められず、判決で算入の言渡しをすることはできない。 第1 事案の概要:被告人は殺人等の罪により第一審で懲役15年(未決勾留算入90日)の…
結論
原判決のうち、未決勾留日数440日を算入した部分は破棄を免れない。適正な算入日数は、被告人のみの控訴期間である3日間に限られる。
実務上の射程
未決勾留日数の算入に関する「判決による算入(刑法21条)」と「法律上当然の通算(刑訴法495条)」の峻別を示す。答案上は、検察官控訴がある場合に、実務的な未決勾留日数の計算誤りを指摘する場面や、裁判所の裁量権の限界を論ずる際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和57(あ)1371 / 裁判年月日: 昭和58年3月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑訴法495条2項1号により当然に全部本刑に通算されるため、裁判所には刑法21条による算入の裁量権はない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役15年の判決を受け、被告人は昭和56年9月14日に、検察官は同月22日にそれぞれ控訴を申し立てた。原…
事件番号: 昭和61(あ)174 / 裁判年月日: 昭和63年3月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、勾留開始から別罪の刑の執行が開始される日の前日までである。 第1 事案の概要:被告人は殺人の事実により起訴・勾留されていたが、第一審判決後の控訴期間中に、以前言い渡されていた別…
事件番号: 昭和51(あ)613 / 裁判年月日: 昭和51年7月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑法21条に基づき未決勾留日数を本刑に算入する際、現実に存在しない日数を含めて算入することは、同条の適用を誤った違法な裁判にあたる。 第1 事案の概要:被告人は第一審で無期懲役の判決を受け、控訴を申し立てた。控訴申立の日(昭和50年8月26日)から原審(控訴審)判決言渡しの前日(昭和51年3月14…