原判決の違法が、法律上当然に全部本刑に通算されるべき未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、厚判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法495条
判旨
検察官も控訴を申し立てた場合、控訴審の未決勾留日数は法定通算(刑訴法495条2項1号)の対象となるため、裁判所が裁量で算入を言い渡すことはできない。
問題の所在(論点)
検察官が控訴を申し立てた場合において、控訴裁判所は刑法21条に基づき、裁量によって未決勾留日数を本刑に算入する旨の言渡しをすることができるか(法定通算の事由がある場合の裁判所の裁量権の有無)。
規範
刑事訴訟法495条2項1号に基づき、検察官が控訴を申し立てた場合の未決勾留日数は、判決確定時に当然に全部が本刑に通算される。したがって、この場合には裁判所に刑法21条による算入の裁量権は認められず、判決において算入の言渡しをすることは許されない。
重要事実
被告人は殺人・死体遺棄の罪で勾留され、第一審で懲役15年の判決を受けた。これに対し、被告人のみならず検察官も控訴を申し立てた。原審(控訴審)は、両者の控訴を棄却するとともに、刑法21条を適用して控訴審における未決勾留日数のうち150日を第一審判決の刑に算入する旨を言い渡した。検察官は、法定通算がなされるべき事案で裁量算入を行うことは判例違反であるとして上告した。
事件番号: 昭和57(あ)1371 / 裁判年月日: 昭和58年3月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑訴法495条2項1号により当然に全部本刑に通算されるため、裁判所には刑法21条による算入の裁量権はない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役15年の判決を受け、被告人は昭和56年9月14日に、検察官は同月22日にそれぞれ控訴を申し立てた。原…
あてはめ
本件では検察官が控訴を申し立てているため、刑訴法495条2項1号が適用される場面である。この規定により、控訴申立後の未決勾留日数は法律上当然に全部が算入されるべき性質のものであり、裁判所が一部のみを算入するといった裁量を行使する余地はない。それにもかかわらず、原審が刑法21条に基づき150日のみを算入すると判断したのは、法定通算に関する法理を誤り、判例に相反する判断を示したものといえる。
結論
控訴裁判所には算入の裁量権はなく、算入の言渡しをすべきではない。原判決のうち未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
実務上の射程
検察官による上訴がある場合の未決勾留算入の要否を判断する際の基礎となる判例である。実務上、法定通算されるべき期間について誤って裁量算入の言渡しがなされた場合、その部分のみを破棄(一部破棄)し、余の部分の上告を棄却するという処理がなされる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和52(あ)1414 / 裁判年月日: 昭和53年4月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく裁量的算入の余地はなく、検察官の控訴申立以降の日数を判決で算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役7年の判決を受け、昭和51…
事件番号: 昭和48(あ)1145 / 裁判年月日: 昭和48年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が上訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく算入の裁量は認められず、判決で算入の言渡しをすることはできない。 第1 事案の概要:被告人は殺人等の罪により第一審で懲役15年(未決勾留算入90日)の…