控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場合には、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法四九五条二項二号により、判決が確定して本件の執行される際当然に全部本件に通算されるべきものであつて、刑法二一条により判決においてその全部または一部を本刑に算入する旨の言渡をすべきでない。
控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場合と未決勾留日数の刑法二一条による本刑算入
刑訴法495条,刑法21条
判旨
被告人の控訴に基づき控訴審が第一審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全日本刑に通算される。したがって、裁判所が刑法21条を適用してその一部を裁量で算入する旨を判決で言い渡すことは、法令の適用を誤るものである。
問題の所在(論点)
被告人の控訴により第一審判決が破棄された場合において、控訴申立後の未決勾留日数について、裁判所が刑法21条に基づきその一部を裁量により算入すると判決で言い渡すことができるか(刑訴法495条2項2号との関係)。
規範
被告人の控訴に基づき第一審判決が破棄される場合、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法495条2項2号の規定により、判決確定後の本刑執行に際して当然にその全部が通算される。この場合、控訴裁判所には当該日数を本刑に通算するか否かの裁量権は委ねられておらず、刑法21条を適用して判決においてその算入を言い渡すことはできない。
重要事実
被告人は尊属殺人罪により第一審で無期懲役の判決を受けた。被告人がこれを不服として控訴したところ、原審(控訴審)は量刑不当を理由に第一審判決を破棄し、懲役15年の刑を言い渡した。その際、原審は刑法21条に基づき、第一審における未決勾留日数中250日に加え、控訴審における未決勾留日数中150日を裁量により本刑に算入する旨を言い渡した。これに対し、検察官が控訴審における未決勾留日数の算入について上告した。
あてはめ
本件は被告人の控訴に基づき控訴審が第一審判決を破棄した事案である。この場合、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法495条2項2号に基づき、判決確定時に当然に全部が通算される法的仕組みとなっている。原審が控訴審での未決勾留日数のうち「150日」のみを算入するとした判断は、本来法律上当然に全日数が通算されるべき事項について、裁判所の裁量により算入範囲を制限できると誤認したものといえる。したがって、原審が刑法21条を適用して一部算入を言い渡した点は、法の解釈・適用を誤った違法がある。
結論
控訴審における未決勾留日数の一部を本刑に算入した原判決部分は破棄されるべきである。当該日数は刑訴法の規定に基づき当然に通算されるため、判決で算入の言渡しを要しない。
実務上の射程
未決勾留日数の算入には、裁判所の裁量による算入(刑法21条)と法律上当然に通算される場合(刑訴法495条)の2種類があることを区別する。被告人に有利な破棄判決が出る場合、被告人の控訴による停滞期間は被告人に不利益に転嫁させないという趣旨から、後者の「当然通算」が優先される。実務上、当然通算の対象となる日数について刑法21条を重ねて適用することは法令誤認となるため、答案上も「算入の言渡しの要否」を問われた際に本法理を適用する。
事件番号: 昭和52(あ)1414 / 裁判年月日: 昭和53年4月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく裁量的算入の余地はなく、検察官の控訴申立以降の日数を判決で算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役7年の判決を受け、昭和51…
事件番号: 昭和57(あ)1371 / 裁判年月日: 昭和58年3月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑訴法495条2項1号により当然に全部本刑に通算されるため、裁判所には刑法21条による算入の裁量権はない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役15年の判決を受け、被告人は昭和56年9月14日に、検察官は同月22日にそれぞれ控訴を申し立てた。原…
事件番号: 昭和48(あ)1145 / 裁判年月日: 昭和48年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が上訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく算入の裁量は認められず、判決で算入の言渡しをすることはできない。 第1 事案の概要:被告人は殺人等の罪により第一審で懲役15年(未決勾留算入90日)の…