原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条1項
判旨
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、勾留開始から別罪の刑の執行が開始される日の前日までである。
問題の所在(論点)
未決勾留期間中に別罪の懲役刑の執行が開始された場合、その刑の執行と重なる期間を刑法21条により本刑に算入できるか(刑法21条の「未決勾留日数」の範囲)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入は、身柄拘束の重複を避ける趣旨である。したがって、被告人が別罪により懲役刑の執行を受けている期間は、当該身柄拘束が「未決勾留」の実質を失い「刑の執行」と重なるため、これを本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は殺人の事実により起訴・勾留されていたが、第一審判決後の控訴期間中に、以前言い渡されていた別罪(傷害罪)の執行猶予が取り消された。被告人は控訴審の継続中に、当該別罪につき懲役1年の刑の執行を受け始め、受刑中のまま本件の控訴審判決を受けた。原審は、控訴申立日から判決言当日までの未決勾留日数(計700日)を本刑に算入したが、その期間には別罪の刑の執行期間が含まれていた。
あてはめ
被告人が控訴を申し立てた昭和58年10月28日から、別罪の刑の執行が開始される前日である昭和60年4月30日までの551日間は、純粋な未決勾留期間として算入が認められる。しかし、同年5月1日以降は別罪の懲役刑の執行が開始されており、この期間は刑の執行と競合している。かかる競合期間を本刑に算入することは、判例の示す刑法21条の解釈に反し違法であるといえる。
事件番号: 昭和52(あ)1414 / 裁判年月日: 昭和53年4月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が控訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく裁量的算入の余地はなく、検察官の控訴申立以降の日数を判決で算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役7年の判決を受け、昭和51…
結論
別罪の懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することはできない。したがって、算入されるべき日数は、執行開始前日までの551日間に限られる。
実務上の射程
実務上、刑法21条の適用において、未決勾留と刑の執行が重複する場合の算入範囲を明確にしたものである。答案作成上は、余罪の刑の執行や収監がある場合に、単純に全拘束期間を算入せず、執行開始日をもって算入を打ち切るべきとする判断枠組みとして用いる。
事件番号: 昭和48(あ)1145 / 裁判年月日: 昭和48年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が上訴を申し立てた場合、その後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項1号により当然に本刑へ通算される。したがって、裁判所には刑法21条に基づく算入の裁量は認められず、判決で算入の言渡しをすることはできない。 第1 事案の概要:被告人は殺人等の罪により第一審で懲役15年(未決勾留算入90日)の…
事件番号: 昭和41(あ)256 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の確定判決に基づく懲役刑の執行期間と重複する場合、その期間は刑法21条に基づく本刑への算入の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、本件賭博開張図利事件の起訴前に勾留され、一、二審を通じて勾留を継続されていた。一方で、被告人は別罪(賭博開張図利、常習賭博)により懲役1年2…