判旨
未決勾留期間が別罪の確定判決に基づく懲役刑の執行期間と重複する場合、その期間は刑法21条に基づく本刑への算入の対象とはならない。
問題の所在(論点)
被告人が別罪の確定判決に基づき既決囚として服役している期間と、本件で勾留されている期間が重複する場合、その重複期間を刑法21条により本件の刑期に算入できるか。
規範
刑法21条に基づき未決勾留日数を本刑に算入するためには、当該勾留が実質的に未決の身分を拘束する性質を有している必要がある。したがって、勾留期間が他の確定判決に基づく刑の執行期間と重複している場合には、当該期間はもはや未決勾留としての実態を欠くため、本刑に算入することはできない。
重要事実
被告人は、本件賭博開張図利事件の起訴前に勾留され、一、二審を通じて勾留を継続されていた。一方で、被告人は別罪(賭博開張図利、常習賭博)により懲役1年2月の実刑判決を受け、本件の控訴審係属中に当該別罪の判決が確定し、刑の執行を受けていた。原審(控訴審)は、控訴棄却とともに、この別罪の刑期執行と重複する控訴審での未決勾留日数のうち60日を、本件の本刑に算入する旨の判決を言い渡した。
あてはめ
本件における原審(控訴審)の未決勾留の全期間は、別罪の確定判決に基づく刑の執行期間と重複している。刑の執行を受けている期間は、法的には既決囚としての拘禁であり、未決勾留としての性質を失っている。それにもかかわらず、原審がこの重複期間から60日を本刑に算入したことは、刑法21条の解釈を誤り、算入できない期間を算入した違法があるといえる。
結論
未決勾留日数の本刑算入に関する原判決部分は破棄される。別罪の刑の執行と重複する未決勾留日数は、本件の本刑に算入することはできない。
実務上の射程
事件番号: 昭和48(あ)834 / 裁判年月日: 昭和48年11月9日 / 結論: その他
甲事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、乙事件の裁判当時甲事件の裁判が未確定の状態であるときは、ただちにこれを違法なものとはいえないが、のちに甲事件の裁判が確定し法定通算されるべき未決勾留が、その本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局、違法なもの…
二重の評価(刑の重複計算)を防止する趣旨。答案上は、未決勾留の算入が問題となる場面で、別罪での服役期間や勾留状の執行停止の有無を確認する際に用いる。実務的には、本判例の理論により「刑の執行と重複する期間は算入不可」という原則が確立している。
事件番号: 昭和41(あ)1109 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留と別罪の確定判決に基づく刑の執行が重なる期間は、未決勾留日数を本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は本件(収賄等)で昭和39年1月14日から勾留されていたが、別罪(賭博開張図利罪)により懲役1年6月に処せられ、同年10月27日に刑が確定した。同日から昭和41年3月2日ま…
事件番号: 昭和43(あ)2538 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】併合罪として1つの判決で言い渡された複数の罪につき、被告人が一部の罪についてのみ控訴し、検察官も控訴しなかった場合、控訴されなかった罪の部分は控訴期間経過により確定し、控訴審の審判対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、賭博開張…
事件番号: 昭和61(あ)174 / 裁判年月日: 昭和63年3月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、勾留開始から別罪の刑の執行が開始される日の前日までである。 第1 事案の概要:被告人は殺人の事実により起訴・勾留されていたが、第一審判決後の控訴期間中に、以前言い渡されていた別…