本件において、起訴されない被疑事実について発せられた勾留状による未決勾留は、たとえそれが事実上起訴された罪の事実の捜査に利用される結果を生じたとしても、起訴された罪の本刑に算入できない。
起訴されない被疑事実に関する未決勾留日数と本刑算入
刑法21条
判旨
別件(賭博開張図利)で発せられた勾留状による未決勾留の日数は、たとえそれが実質的に本件(常習賭博)の捜査に利用されていたとしても、本件の刑期に算入することはできない。
問題の所在(論点)
不起訴となった別件の被疑事実について発せられた勾留状による未決勾留の日数が、実質的に起訴された被告事件の捜査に利用されていた場合、当該被告事件の刑期(本刑)に算入できるか(刑法21条の「未決勾留の日数」の範囲)。
規範
刑法21条に基づき、本刑に算入される未決勾留の日数は、当該被告事件について発せられた勾留状に基づく拘禁期間に限られる。別件について発せられた勾留状に基づく拘禁期間は、たとえ実質的に当該被告事件の捜査に利用されるという側面があったとしても、別件と当該被告事件が実体法上または手続法上別個である以上、原則として本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は常習賭博の事実(本件)で起訴されたが、それ以前に賭博開張図利の被疑事実(別件)について発せられた勾留状により未決勾留を受けていた。その後、別件については不起訴となったが、本件の常習賭博罪について有罪判決が下される際、別件の勾留期間を本件の刑期に算入できるかが争点となった。
事件番号: 昭和48(あ)834 / 裁判年月日: 昭和48年11月9日 / 結論: その他
甲事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、乙事件の裁判当時甲事件の裁判が未確定の状態であるときは、ただちにこれを違法なものとはいえないが、のちに甲事件の裁判が確定し法定通算されるべき未決勾留が、その本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局、違法なもの…
あてはめ
本件において、未決勾留はあくまで不起訴となった賭博開張図利の事実に基づいて執行されたものである。たとえその勾留が実質上、常習賭博の事実の捜査に利用されるという結果を生じたとしても、法的には別個の被疑事実に基づく拘束である。したがって、勾留状の対象となっていない常習賭博の罪の刑期との間に、算入を基礎づける直接的な法的関連性は認められない。
結論
別件の勾留状による未決勾留は、本件常習賭博の罪の本刑に算入できない。
実務上の射程
本判決は、別件勾留の不当性そのものではなく、刑の執行段階における算入の可否を判断したものである。答案上は、実質的な捜査の重複があったとしても、形式的な勾留状の対象事実を基準とする厳格な立場として、刑法21条の解釈において引用する。
事件番号: 昭和23(れ)1340 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
一 たとい被告人等に對する勾留が不當なものであつたと假定しても、それに對しては各種の救濟の方法を規定しているのであつて、その未決勾留日數を本刑に算入しなくても憲法第三四條に違反するものではない。 二 常習賭博罪と賭博開帳罪とは刑法第一八六條の第一項と第二項とに分けて規定されて居るのであつて、もともと兩罪は罪質を異にし、…
事件番号: 昭和41(あ)256 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の確定判決に基づく懲役刑の執行期間と重複する場合、その期間は刑法21条に基づく本刑への算入の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、本件賭博開張図利事件の起訴前に勾留され、一、二審を通じて勾留を継続されていた。一方で、被告人は別罪(賭博開張図利、常習賭博)により懲役1年2…
事件番号: 昭和50(あ)978 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留と罰金刑の換刑処分たる労役場留置の執行が競合した場合、その重複する期間の未決勾留日数を本刑に算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は、常習累犯窃盗罪で勾留中、別罪である複数の道路交通法違反等による罰金刑につき、換刑処分としての労役場留置の執行を昭和49年10月28日から昭和5…