原審の未決算入に誤りがあり、判例違反として破棄された事例
刑法21条
判旨
未決勾留と罰金刑の換刑処分たる労役場留置の執行が競合した場合、その重複する期間の未決勾留日数を本刑に算入することは許されない。
問題の所在(論点)
未決勾留と罰金刑の換刑処分である労役場留置の執行が競合した場合、その重複する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入において、未決勾留と罰金刑の換刑処分たる労役場留置の執行が実質的に重複して行われた場合には、その重複期間の日数を本刑に算入することは違法である。
重要事実
被告人は、常習累犯窃盗罪で勾留中、別罪である複数の道路交通法違反等による罰金刑につき、換刑処分としての労役場留置の執行を昭和49年10月28日から昭和50年2月19日まで受けた。原審は、この労役場留置期間と重複する未決勾留期間を含め、合計80日を本刑に算入したため、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人は労役場留置の執行を昭和50年2月19日まで受けており、この期間は既に他の確定判決に基づく刑の執行が行われている状態にある。刑法21条の算入対象となる「未決勾留」は、刑の執行が開始されていない状態を前提とする。したがって、労役場留置が終了した翌日である同年2月20日から、原判決言い渡し前日である同年4月2日までの42日間のみが算入可能な日数であり、これを超えて80日を算入した原判決の判断は判例に反し、不当に長い日数を算入したものであるといえる。
結論
未決勾留と労役場留置が重複する期間については本刑に算入できない。原判決中、算入日数を80日とした部分を破棄し、適正な日数である42日を算入する。
実務上の射程
本判決は、刑の執行(労役場留置を含む)が開始された後は、形式的に未決勾留の状態が続いていたとしても、その期間は本刑に算入できないという原則を明示している。答案作成上は、余罪による既決刑の執行が先行している事実がある場合に、未決勾留日数の算入可能性を否定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和59(あ)189 / 裁判年月日: 昭和59年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することは違法であり、仮出獄の取消しに伴う残刑執行期間中の勾留日数は算入の対象外となる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で懲役3年に処され、仮出獄中の昭和58年4月に別件窃盗で勾留された。同年5月27日に前科の仮出獄が取り消され、同…