甲事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、乙事件の裁判当時甲事件の裁判が未確定の状態であるときは、ただちにこれを違法なものとはいえないが、のちに甲事件の裁判が確定し法定通算されるべき未決勾留が、その本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局、違法なものとなる。
甲事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入することの適否
刑法21条,刑訴法495条
判旨
被告人が複数の勾留状により拘禁されている場合、他事件の確定により法定通算される未決勾留日数と重複する期間を本刑に算入することは、実質的に刑法21条等の趣旨に反し違法となる。算入裁判の当時に他事件が未確定であっても、その後に確定して二重算入の結果が生じたならば、上訴により是正されるべきである。
問題の所在(論点)
被告人が複数の事件で勾留されている場合、一方の事件で既に法定通算された、あるいは通算されるべき未決勾留期間を、他方の事件の判決において重ねて裁定算入することの可否、および算入裁判時に他事件が未確定であった場合の処理が問題となる。
規範
刑法21条および刑訴法495条の未決勾留算入制度は、未決勾留が実質的に刑の執行と同様の性質を有することに鑑みた制度である。したがって、被告人が複数の勾留状により拘禁されている場合において、他事件の判決確定により法定通算の対象となる未決勾留と重複する期間を、当該事件の本刑に算入することは、未決勾留を二重に評価して被告人に不当な利益を与えるものであり、実質的に刑法21条等の趣旨に反し違法となる。裁判時に他事件が未確定であっても、後に確定した場合にはこの違法が顕在化するため、上訴により是正すべきである。
重要事実
被告人は本件(窃盗等)で懲役10月の判決を受け、控訴期間中も勾留されていたが、原審(東京高裁)は未決勾留日数のうち120日を本刑に算入する旨の判決を言い渡した。一方、被告人は別件(別の窃盗等)でも勾留・起訴されており、原審判決の直後に別件の控訴審判決が確定した。その結果、別件の刑期には刑訴法495条に基づき110日が法定通算されたが、そのうち56日は、本件の原審が算入した120日と期間が重複していた。検察官は、この二重算入を不服として上告した。
事件番号: 昭和41(あ)256 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の確定判決に基づく懲役刑の執行期間と重複する場合、その期間は刑法21条に基づく本刑への算入の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、本件賭博開張図利事件の起訴前に勾留され、一、二審を通じて勾留を継続されていた。一方で、被告人は別罪(賭博開張図利、常習賭博)により懲役1年2…
あてはめ
本件において、原審における未決勾留期間174日のうち、別件判決の確定によって110日が別件の本刑に法定通算された。原審が算入した120日のうち56日は、この別件での法定通算分と期間が重複している。原審の言い渡し時点では別件は未確定であったため、直ちに算入が違法とはいえないが、その後に別件が確定し法定通算が実行された以上、本件での算入は二重評価となり、被告人に不当な利益を与える結果となっている。したがって、重複する56日分を算入した原審の判断は、結果として刑法21条および刑訴法495条の解釈適用を誤ったものと解される。
結論
原判決の未決勾留算入部分を破棄する。別件での法定通算分と重複しない64日分に限り、本件の本刑に算入するのが相当である。
実務上の射程
併合罪とならず別々に審理されている数個の事件で重複勾留がある場合、未決勾留の「二重算入」を防止すべきとする実務上の準則を示したものである。答案上は、未決勾留算入の適法性を検討する際、他事件の処理状況を把握し、一回の拘禁が複数の刑期を同時に減免させる結果(不当な利益)を招いていないかを確認する指標として用いる。
事件番号: 昭和42(あ)907 / 裁判年月日: 昭和42年9月12日 / 結論: 棄却
未決勾留日数を本刑に算入する際全部を算入するかまたは一部を算入するかを裁判所の自由裁量にまかせている刑法第二一条が憲法に違反しないことは、昭和二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決、刑集二巻四号二九八頁の趣旨に照らし明らかである。
事件番号: 昭和42(あ)2470 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の余罪を考慮することは、起訴されていない犯罪事実を実質的に処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、一審および原審において有罪判決を受けたが、その量刑に際して起訴されていない犯罪事実が考慮されたとして、憲法違反および刑事訴訟法40…
事件番号: 昭和45(あ)576 / 裁判年月日: 昭和45年7月10日 / 結論: 棄却
被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。