被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
事件の同一性を欠くとされた事例
刑法45条,刑法185条,刑法186条2項,刑訴法60条,刑訴法256条,刑訴法280条,刑訴法312条
判旨
勾留状記載の被疑事実である賭博罪と、起訴状記載の公訴事実である賭博開張図利幇助罪は、併合罪の関係にあり事件の同一性を欠く。事件の同一性が認められない場合であっても、それが直ちに被告人の供述の任意性判断に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
勾留状に記載された「自ら行った賭博」の事実と、起訴状に記載された「他人の賭博開張図利に対する幇助」の事実との間に、事件の同一性(刑事訴訟法上の同一性)が認められるか。また、同一性が否定される場合に供述の任意性に影響するか。
規範
二つの事実が刑法上の併合罪の関係にある場合には、原則として事案の基礎となる社会的事実の共通性が否定されるため、刑事訴訟法上の「事件の同一性」を欠くものと解すべきである。
重要事実
被告人は、昭和43年3月28日に特定の場所において自ら賭博をしたという被疑事実により勾留状が発せられていた。しかし、その後の起訴状においては、同日同所において他人が行った賭博開張図利につき、賭具を貸与して幇助したという公訴事実が記載された。原審はこの両事実に同一性があると判断したため、上告人がその誤りを主張した事案である。
事件番号: 昭和42(あ)2470 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の余罪を考慮することは、起訴されていない犯罪事実を実質的に処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、一審および原審において有罪判決を受けたが、その量刑に際して起訴されていない犯罪事実が考慮されたとして、憲法違反および刑事訴訟法40…
あてはめ
本件の両事実は、一方は自己の犯罪(賭博罪)であり、他方は他人の犯罪に対する加担(賭博開張図利幇助罪)である。これらは刑法上、併合罪の関係に立つものである。したがって、事実の基礎を共通にするものとはいえず、事件の同一性を欠く。もっとも、勾留状の事実と起訴事実が別罪であるという法令違反があったとしても、そのことのみをもって直ちに被告人の供述の任意性の判断に影響を及ぼすものではなく、記録上も任意性を疑うべき事情は認められない。
結論
自らが行った賭博と他人の賭博開張図利への幇助は、併合罪の関係にあり事件の同一性を欠く。ただし、この同一性の欠如は被告人の供述の任意性や信用性に当然の影響を及ぼすものではないため、上告は棄却される。
実務上の射程
「事件の同一性」の判断において、併合罪の関係にある事実は同一性を欠くという基準を示した。また、勾留事実と起訴事実の不一致(別件逮捕・勾留の議論に関連)が、直ちに自白の任意性を否定する根拠にはならないという判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2116 / 裁判年月日: 昭和28年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賭場開帳図利罪において、場所を異にする複数の開帳行為がそれぞれ別個の意思活動に基づくものである場合には、単一の意思に基づく包括的一罪とは認められず、併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は自ら主宰者として賭博場を開帳し、利益を図った。被告人には本件以外にも複数の賭場開帳図利の事実(所論一乃至五の…
事件番号: 昭和41(あ)1266 / 裁判年月日: 昭和42年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正犯と共犯の区別が曖昧な場合であっても、被告人の犯罪成立そのものに影響がなく、かつ量刑上も特段の相違を来さないのであれば、判決に影響を及ぼす事実に誤認があるとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は賭博場開張図利罪(刑法186条2項)に問われた。原判決において、共犯者Aは被告人の犯行を幇助したに過…
事件番号: 昭和48(あ)834 / 裁判年月日: 昭和48年11月9日 / 結論: その他
甲事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、乙事件の裁判当時甲事件の裁判が未確定の状態であるときは、ただちにこれを違法なものとはいえないが、のちに甲事件の裁判が確定し法定通算されるべき未決勾留が、その本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局、違法なもの…
事件番号: 昭和25(れ)842 / 裁判年月日: 昭和25年9月14日 / 結論: 棄却
一 賭場開帳図利罪において図利の事實がその犯罪構成要件たることは勿論であるが、その收得せんとした利益の價額、數量等は必ずしもこれが構成要件ではない。原判決では、被告人が判示の日時頃、判示の各賭場を開帳し、多數の賭客を招き判示の賭博をなさしめて寺銭を徴して利を図つたものであることが説示されているのである。從つて原判決はそ…