判旨
正犯と共犯の区別が曖昧な場合であっても、被告人の犯罪成立そのものに影響がなく、かつ量刑上も特段の相違を来さないのであれば、判決に影響を及ぼす事実に誤認があるとはいえない。
問題の所在(論点)
被告人が単独正犯(または正犯)か幇助犯(または共犯)かの認定において、原判決が示した事実関係と異なる可能性があったとしても、量刑等に影響がない場合に「判決に影響を及ぼすべき事実の誤認」があるといえるか。
規範
事実誤認を理由とする控訴・上告において、判示された認定事実が、仮に別の法的構成(共同正犯と幇助犯の差など)を採り得たとしても、結論としての犯罪の成否に変わりがなく、かつ量刑の判断に影響を及ぼさない場合には、判決に影響を及ぼすべき事実の誤認(刑事訴訟法382条等)には当たらない。
重要事実
被告人は賭博場開張図利罪(刑法186条2項)に問われた。原判決において、共犯者Aは被告人の犯行を幇助したに過ぎないと認定されていた。これに対し弁護側は、Aは正犯である可能性を示唆し、事実誤認を主張した。しかし、原判決は仮に被告人とAの共同正犯であったとしても、被告人の罪責自体に変わりはなく、量刑上も重要ではないと判断した。
あてはめ
本件では、被告人の賭博場開張図利罪の成立自体は動かない。共犯者Aの関与の程度が幇助であったか共同正犯であったかは、被告人の構成要件該当性に直接の影響を与えない。また、仮に共同犯行であったとしても、被告人の責任の重さや非難の程度に大きな変化はなく、量刑上も特に相違を来すと認められない。したがって、認定の細部に差異が生じる余地があったとしても、それは判決の結論を左右するものではない。
結論
被告人の犯罪成立および量刑に影響を及ぼさない程度の認定事実の差異は、適法な上告理由となる事実誤認には当たらない。
事件番号: 昭和42(あ)2470 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の余罪を考慮することは、起訴されていない犯罪事実を実質的に処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、一審および原審において有罪判決を受けたが、その量刑に際して起訴されていない犯罪事実が考慮されたとして、憲法違反および刑事訴訟法40…
実務上の射程
共犯関係の認定において、正犯か幇助かの評価が揺れ動く場面で、被告人の罪責に実質的影響がない場合に「判決に影響を及ぼす事実の誤認」を否定する論理として、訴訟法上の主張の排斥に活用できる。
事件番号: 昭和45(あ)576 / 裁判年月日: 昭和45年7月10日 / 結論: 棄却
被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
事件番号: 昭和41(あ)1629 / 裁判年月日: 昭和42年3月24日 / 結論: 棄却
被告人の統率する輩下の前科、前歴等を被告人の性格、経歴その他の量刑の情状を推知するための資料としてこれを考慮することが憲法第三一条に違反しないことは、当裁判所大法廷判決(昭和四〇年(あ)第八七八号同四一年七月一三日宣告、刑集二〇巻六号六〇九頁)の趣旨に照らし明らかである。