被告人の統率する輩下の前科、前歴等を被告人の性格、経歴その他の量刑の情状を推知するための資料としてこれを考慮することが憲法第三一条に違反しないことは、当裁判所大法廷判決(昭和四〇年(あ)第八七八号同四一年七月一三日宣告、刑集二〇巻六号六〇九頁)の趣旨に照らし明らかである。
被告人の統率する輩下の前科前歴等を量刑上参酌することと憲法第三一条
憲法31条,刑訴法317条
判旨
未起訴の犯罪事実や被告人が統率する部下たちの前科・前歴を、被告人の性格、経歴、その他の量刑情状を推知するための資料として考慮することは、憲法31条および39条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判の量刑段階において、起訴されていない別罪の事実や、被告人の部下(配下)の前科・前歴といった周辺事実を情状資料として考慮することが、憲法31条の適正手続の保障や39条の二重処罰の禁止に違反しないか。
規範
被告人の量刑を決定するにあたり、起訴されていない犯罪事実や、被告人の身辺・環境に関する事実(配下の者の前科等)を、被告人の性格、経歴、環境等、量刑の情状を推知するための資料として考慮することは、憲法の定める適正手続や二重処罰の禁止に抵触せず、許容される。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴された際、裁判所が量刑の判断において、当該事件自体ではない被告人の余罪(未起訴の犯罪事実)や、被告人が統率していた配下の者たちが有する前科・前歴等の事実を考慮した。弁護人は、これらが憲法31条(適正手続)および39条(二重処罰の禁止)に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和42(あ)2470 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の余罪を考慮することは、起訴されていない犯罪事実を実質的に処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、一審および原審において有罪判決を受けたが、その量刑に際して起訴されていない犯罪事実が考慮されたとして、憲法違反および刑事訴訟法40…
あてはめ
最高裁は先行する大法廷判決(昭和41年7月13日)を引用し、未起訴事実を単なる性格や経歴の推知資料として用いることは憲法違反ではないとした。さらに、本件の特徴である「被告人が統率する輩下(部下)の前科・前歴」についても、これによって被告人の性格や経歴、社会的地位・環境といった量刑上の情状を把握する資料とすることは、前記大法廷判決の趣旨に照らして適法であり、適正手続に反するものではないと評価した。
結論
被告人の余罪や部下の前科を量刑上の情状資料として考慮することは憲法31条、39条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
未起訴の余罪を実質的に処罰する目的で考慮することは許されないが、被告人の反社会性や情状を把握する資料としての利用は広く認められる。特に暴力団組織等の首領に対する量刑において、組織の実態(部下の経歴等)を被告人の属性・環境として考慮できる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和47(あ)1624 / 裁判年月日: 昭和48年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない余罪の事実であっても、被告人の性質、経歴等の主観的事項に関する情状として、犯行の常習性を認定するための資料とすることができる。 第1 事案の概要:被告人が賭博罪により起訴された事案において、原審および第一審は、起訴状に記載されていない他の賭博行為(余罪)の存在を認定した。弁護人は、…
事件番号: 昭和41(あ)2695 / 裁判年月日: 昭和42年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賭博開張図利罪の処罰規定は、何人に対しても差別なく平等に適用されるものであるから、法の下の平等を定めた憲法14条に反しない。 第1 事案の概要:被告人が賭博開張図利の行為により起訴され、有罪判決を受けた事案において、弁護人が当該処罰規定について憲法14条違反を主張し、上告した。 第2 問題の所在(…