一 賭場開帳図利罪において図利の事實がその犯罪構成要件たることは勿論であるが、その收得せんとした利益の價額、數量等は必ずしもこれが構成要件ではない。原判決では、被告人が判示の日時頃、判示の各賭場を開帳し、多數の賭客を招き判示の賭博をなさしめて寺銭を徴して利を図つたものであることが説示されているのである。從つて原判決はその徴した寺銭の金額を明示しなかつたとしても、なほ処罰の對象とされた被告人の賭場開帳図利行爲を具体的に説示したものというに十分である。 二 賭場開帳図利罪は犯人が自ら主宰者となり、その支配下に賭博をさせる一定の場所を提供し、寺銭入場料等の名目で利益の收得を企図することによつて成立するのであつて、所論のごとく慣行犯と解すべきいわれはない。
一 賭場開帳図利罪については開帳者が收得した利益の價格數量を判示する必要はない 二 賭場開帳図利罪の成立要件と罪質
刑法186條2項,刑法168條2項,舊刑訴法360條1項
判旨
賭場開張図利罪(刑法186条2項)は、主宰者が支配する場所に賭博場を提供し、利益の収得を企図することで成立し、慣行犯ではなく、別個の意思に基づく行為は併合罪となる。また、図利の事実は構成要件であるが、収得しようとした利益の具体的な価額や数量までを明示する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 賭場開張図利罪は「慣行犯」として一罪となるのか、あるいは個別の開張行為ごとに罪が成立し併合罪となるのか。 2. 犯罪構成要件として、徴収した寺銭等の具体的な金額を判決書に明示する必要があるか。
規範
1. 賭場開張図利罪の成立要件は、(1)犯人が自ら主宰者となり、(2)その支配の下に賭博をさせる一定の場所を提供し、(3)寺銭や入場料等の名目で利益の収得を企図することである。本罪は慣行犯ではない。 2. 図利の事実は構成要件であるが、収得すべき利益の具体的な価額・数量等は、処罰対象となる行為が具体的に特定されている限り、必ずしも構成要件として明示することを要しない。 3. 別個の意思発動に基づき、日時・場所を異にしてなされた複数の賭場開張行為は、併合罪(刑法45条前段)として扱われる。
重要事実
被告人Bは、自宅および他人の住宅において、それぞれ日時を異にし、別個の意思発動に基づいて複数回、賭場を開張した。原審は、これらの行為を慣行犯(一罪)としてではなく、別個の独立した罪と認定し、銃砲等所持禁止令違反と併せて併合罪として処断した。弁護人は、本罪は慣行犯であること、および徴収した寺銭の金額が明示されていないことから、判決の違法を主張して上告した。
あてはめ
1. 賭場開張図利罪の本質は、主宰者が場所を提供し利益を企図する点にある。被告人は、自宅および別の住宅において、各々別個の意思により日時を異にして開張行為を行っている。したがって、これらは包括的な一罪(慣行犯)ではなく、各々が独立した犯罪を構成するため、併合罪とした原審の判断は妥当である。 2. 被告人が各賭場を開張し、多数の賭客を招いて寺銭を徴収し利を図った事実は認定されている。構成要件たる「図利の目的」はこれにより認められ、具体的な金額の記載がなくとも、処罰対象となる行為は十分に特定されており、違法はない。
結論
本罪は慣行犯ではなく、別個の意思に基づく複数の開張行為は併合罪となる。また、利益の具体的金額の明示は構成要件として必須ではない。上告棄却。
実務上の射程
賭場開張図利罪の罪数判断において、反復継続の意図がある場合でも、場所や意思の断絶がある場合には併合罪となりうることを示した。また、起訴状や判決書における図利事実の特定程度についても、金額の明示までは不要とする実務上の指針となっている。
事件番号: 昭和26(れ)2116 / 裁判年月日: 昭和28年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賭場開帳図利罪において、場所を異にする複数の開帳行為がそれぞれ別個の意思活動に基づくものである場合には、単一の意思に基づく包括的一罪とは認められず、併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は自ら主宰者として賭博場を開帳し、利益を図った。被告人には本件以外にも複数の賭場開帳図利の事実(所論一乃至五の…
事件番号: 昭和24(れ)2484 / 裁判年月日: 昭和25年5月19日 / 結論: 棄却
一体軍鷄賭博で賭場開帳者が傷代蓆代、等の名義で鷄博の勝者から一定率の金錢を徴收した場合には、むしろかえつて、特段の事情がない限りその徴收金は一應賭場開帳者の利に歸するものであるとみるのが社會通念であつて、特別の判示を要しないこと一般の賭博における寺錢等と異らない。そして又その金錢が夫々軍鷄所有者、蓆所有者等に軍鷄の傷代…
事件番号: 昭和46(あ)2714 / 裁判年月日: 昭和48年2月28日 / 結論: 棄却
一 賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。 二 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申…