死刑事件(沖縄嵐山事件)
判旨
絞首による死刑は憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」には当たらず、犯行の動機、計画性、結果の重大性等を総合考慮し、極刑を維持した原判決の量刑は相当である。
問題の所在(論点)
絞首刑の合憲性、および犯行時に精神障害がないと認められる事案における死刑適用の是非(量刑の不当性)。
規範
死刑が憲法36条に違反しないことは判例の確立するところである。量刑の妥当性については、(1)犯行の動機、(2)計画性、(3)態様、(4)犯行後の行状、(5)被害者遺族に与えた打撃、(6)犯行の社会的影響等の諸要素を総合考慮し、被告人の責任が誠に重く、やむを得ないものと認められるか否かで判断する。
重要事実
被告人は妻に家出された際、妻の家族が逃避させていると思い込み、一家を皆殺しにして住居を焼き払うと決意した。大阪から妻の実家がある沖縄へ赴き、刃渡り約26センチメートルの包丁とガソリン約27リットルを事前に購入。実家に4日間泊まり込み機会をうかがった上で、深夜、就寝中の義弟、義母、義父を順次突き刺し、2名を即死させ1名に重傷を負わせた。また、逃走中に窃盗を犯した。
あてはめ
被告人の犯行は、妻の身内を皆殺しにするという執拗な殺意に基づくものであり、凶器や燃料を事前に調達して数日間機会をうかがうなど、極めて高い計画性が認められる。また、就寝中の無防備な家族3名を襲撃し、2名の命を奪った態様は残虐である。動機の独善性や、遺族の無念、社会的影響の大きさに鑑みると、犯行時に心神喪失等の状態でなかった以上、有利な事情を最大限考慮しても刑事責任は極めて重いといえる。
結論
本件死刑判決は、憲法36条に違反せず、被告人の責任の重さに照らしてやむを得ないものとして是認される。
事件番号: 昭和52(あ)1536 / 裁判年月日: 昭和54年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の合憲性を前提とした上で、犯行の動機、態様、結果の重大性、被害感情、および被告人の前科等を総合的に考慮し、極めて凶悪な犯行については死刑の適用もやむを得ないとする判断を示した。 第1 事案の概要:強盗殺人等の罪により無期懲役刑に処せられ、仮出獄中であった被告人は、家出した妻の行方を知っていると…
実務上の射程
死刑の合憲性に関する形式的な論証のほか、死刑選択の判断枠組み(いわゆる永山基準に先立つ実務的考慮要素)を示す。特に、計画性の高さや殺害人数、動機の態様が量刑判断において決定的な重みを持つことを論証する際の参考となる。
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 昭和58(あ)1 / 裁判年月日: 平成元年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、また検察官による公訴の提起が差別的意図に基づかず訴追裁量を逸脱しない限り、憲法14条、31条に違反することはない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者らと共謀し、3名の殺害(C、F、Jに対する殺人)、現住建造物等放火未遂、及び約束手形5通の恐喝を行っ…