所論は死刑一般を違憲であると主張するものではなく、単に具体的に刑法一九九条の普通殺人罪に対する死刑の規定は残虐な刑罰であるから、原審判決は憲法三六条に違反すると主張するのである。しかしながら、殺人は尊厳な個人の生命を奪うものであつて社会的人間生活の安全を根底から破壊する憎むべき反社会的行為である。今日の時代と環境とにおいて、殺人罪に対し社会の秩序と公共の福祉を護るために刑罰として死刑を科する場合のあることは、必要であり是認さるべきであると言わなければならない(判例集二巻三号一九三頁参照)。それ故、刑法一九九条の規定は、憲法三六条に違反するところはない。また本件の具体的事案において死刑を科したことも違憲と認むべき点は存在しない。
刑法第一九九条の合憲法(憲法第三六条)
刑法199条,憲法36条
判旨
殺人罪に対して刑罰として死刑を科すことは、社会の秩序と公共の福祉を護るために必要であり、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法199条(殺人罪)の法定刑として死刑を規定することは、憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」に該当し、憲法違反となるか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当するか否かは、今日の時代と環境において、社会の秩序と公共の福祉を護るために、当該罪刑の規定が必要であり是認されるべきかという観点から判断される。
重要事実
被告人は殺人罪(刑法199条)に問われ、死刑の判決を受けた。これに対し弁護人は、殺人罪に対して死刑を科すと定めた刑法199条の規定は、憲法36条が絶対的に禁止する「残虐な刑罰」に該当し違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)1696 / 裁判年月日: 昭和27年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、憲法11条(基本的人権の享有)、13条(個人の尊重・生命権)、97条(基本的人権の保障)及び36条(拷問・残虐な刑罰の禁止)の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において死刑の判決を受けたところ、死刑制度そのものが憲法11条、13条、36条、97条、さらには9条に違反…
あてはめ
殺人は、個人の尊厳ある生命を奪い、社会的人間生活の安全を根底から破壊する反社会的な行為である。このような重大な犯罪に対し、社会秩序を維持し公共の福祉を保護するという目的から、死刑を選択肢として設けることは、現代の社会環境において必要かつ適当な手段として是認される。したがって、法定刑に死刑が含まれていること自体も、本件の具体的事案において死刑を選択したことも、残虐な刑罰を科したものとはいえない。
結論
刑法199条の規定は憲法36条に違反しない。また、本件で死刑を科したことも違憲ではない。
実務上の射程
死刑制度そのものの合憲性を認めた最大判昭23.3.12を再確認し、特に殺人罪への適用について合憲性を明示したものである。答案上は、憲法36条の「残虐な刑罰」の意義や、公共の福祉による刑罰の正当化を論じる際の基礎となるが、現代では「死刑=残虐」という主張自体が裁判実務上通らないため、主に制度の歴史的経緯や合憲性の根拠として言及するにとどまる。
事件番号: 昭和39(あ)1984 / 裁判年月日: 昭和40年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺人罪を犯した者に対して死刑を科することを認めた刑法199条は、憲法前文および各条項に違反するものではない。また、死刑制度そのものも、残虐な刑罰を禁じた憲法36条等に照らして合憲であるとするのが判例の趣旨である。 第1 事案の概要:被告人は殺人罪等の罪に問われ、原審において死刑の判決を受けた。これ…
事件番号: 昭和30(あ)467 / 裁判年月日: 昭和30年6月30日 / 結論: 棄却
死刑は憲法三六条、一一条、一三条、九条、九七条等に違反しない。
事件番号: 昭和28(あ)4612 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
一 控訴審判決が、心神耗弱による刑の減軽をなした第一審判決を、量刑不当として破棄した上同様の減軽をなして自判した場合に、控訴趣意においては単に量刑不当の主張をなしたに止まるにかかわらず、上告審においてはじめて心神耗弱の認定の誤を論じて判例違反を主張することは許されない。 二 憲法第二五条第二項の法意は、同条第一項の、国…