判旨
殺人罪を犯した者に対して死刑を科することを認めた刑法199条は、憲法前文および各条項に違反するものではない。また、死刑制度そのものも、残虐な刑罰を禁じた憲法36条等に照らして合憲であるとするのが判例の趣旨である。
問題の所在(論点)
死刑を定めた刑法の規定、特に殺人罪に対して死刑の適用を認めている刑法199条が、憲法に違反しないか。
規範
刑罰としての死刑を定めた刑法の各規定、および殺人罪に対して死刑を科すことを定めた刑法199条は、日本国憲法が定める基本的人権の保障や平和主義等の諸原則に照らしても違憲ではない。
重要事実
被告人は殺人罪等の罪に問われ、原審において死刑の判決を受けた。これに対し、被告人および弁護人は、死刑を定めた刑法の規定が憲法に違反するものであること、また犯行後の改悛の情が顕著であること等を理由に上告を申し立てた。なお、本件の具体的な殺人態様等の事実関係については、判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁判所の判例(昭和23年3月12日大法廷判決および昭和27年1月23日大法廷判決)の趣旨に照らせば、死刑を定めた規定自体が憲法に違反するものではないことは明らかである。また、殺人という重大な罪を犯した者に対し、法定刑として死刑を科し得るとしている刑法199条も、憲法前文や各条項が掲げる理念に反するものとはいえない。本件において被告人が主張する「犯行後の改悛の情」等の事情を考慮しても、死刑を選択した原判決が著しく不当であり破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
刑法199条および死刑制度は憲法に違反しない。したがって、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
死刑制度の合憲性に関する再確認的な判例。答案上は、死刑制度の是非が直接問われる場面で、昭和23年大法廷判決を補強する先例として引用し、殺人罪への死刑適用が当然に合憲であることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和54(あ)1786 / 裁判年月日: 昭和55年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条違反を主張する上告において、原判決のいかなる判断がどのような理由で憲法に違反するかを具体的に明示しない主張や、実質的に事実誤認、単なる法令違反、量刑不当をいう主張は、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、憲法14条違反および憲法37条違反を理由と…
事件番号: 昭和26(あ)4480 / 裁判年月日: 昭和28年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】現行の死刑制度は憲法に違反するものではなく、過去の大法廷判決の趣旨に照らして合憲である。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、第一審において死刑を言い渡された。被告人側は、死刑制度自体が憲法に違反するものであると主張し、また量刑の不当や事実誤認、自白の任意性欠如などを理由に上告した。…
事件番号: 平成24(あ)193 / 裁判年月日: 平成26年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法11条、13条、31条及び36条に違反しない。また、元厚生事務次官らに対する連続殺傷事件において、執拗な殺意、極めて高い計画性、冷酷残忍な犯行態様、及び重大な結果に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、幼少期の飼い犬の殺…