死刑事件(熊本県内の妻の実姉一家殺傷事件)
判旨
死刑の合憲性を前提とした上で、犯行の動機、態様、結果の重大性、被害感情、および被告人の前科等を総合的に考慮し、極めて凶悪な犯行については死刑の適用もやむを得ないとする判断を示した。
問題の所在(論点)
死刑の適用において考慮すべき要素は何か、および本件のような犯行態様・前科を有する事案において死刑を選択することが許容されるか。
規範
死刑の適用を検討するにあたっては、①犯行の動機・目的、②犯行の態様(執拗性・残虐性等)、③結果の重大性(殺害された被害者の数等)、④遺族の被害感情、⑤社会的影響、⑥被告人の前科、⑦犯行後の情状など、諸般の事情を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、極刑の適用がやむを得ないと認められる場合には、死刑を選択することができる。
重要事実
強盗殺人等の罪により無期懲役刑に処せられ、仮出獄中であった被告人は、家出した妻の行方を知っていると考えた妻の姉夫婦の宅を襲撃した。被告人は、確定的殺意をもって出刃包丁および登山ナイフで姉夫婦とその子供二人の計四人を突き刺し、姉婿を殺害し、残る三人に重軽傷を負わせた(殺人および同未遂)。第一審および控訴審は死刑を選択したため、被告人側が憲法36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)違反等を理由に上告した。
あてはめ
本件は、無期懲役刑の仮出獄中に、妻の居場所を問い詰めるという身勝手な動機から、無関係な親族一家四人を殺傷した極めて凶悪な犯行である。殺害されたのは一人であるが、三人に負傷を負わせた結果は重大であり、出刃包丁等を用いた執拗な殺意に基づく犯行態様も残虐である。また、以前にも強盗殺人等の重大な前科があるにもかかわらず、仮出獄中に再犯に及んだ点は、被告人の改善更生が困難であることを示している。これらの事情を総合すると、被告人の罪責は極めて重いといえる。
事件番号: 昭和51(あ)364 / 裁判年月日: 昭和52年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】絞首による死刑は憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」には当たらず、犯行の動機、計画性、結果の重大性等を総合考慮し、極刑を維持した原判決の量刑は相当である。 第1 事案の概要:被告人は妻に家出された際、妻の家族が逃避させていると思い込み、一家を皆殺しにして住居を焼き払うと決意した。大阪から妻の実家がある…
結論
本件犯行の動機、態様、被害者に与えた打撃および前科等を考慮すれば、死刑を選択した原審の判断はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」が示される前の判例であるが、死刑選択の際に考慮すべき具体的要素(動機、態様、前科等)を列挙しており、裁判員裁判等における死刑適用の当否を論じる際の枠組みとして、実務上および答案作成上の基礎となる。
事件番号: 昭和52(あ)2063 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、犯行の動機、態様、結果の重大性、特に非のない二人の貴重な人命(うち一名は児童)を奪った残虐な殺害態様を考慮し、被告人の刑責が極めて重い場合には、死刑を選択した原判決の科刑を是認できる。 第1 事案の概要:被告人は、わずか8歳の児童を含む2名の貴重な人命を奪う殺人事件を起こし…
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…