いわゆるアイヌ問題に関する一審判決の説示が被告人の表現の自由を侵害したとして違憲(一九条、二一条一項違反)をいう主張が「欠前提」とされた事例
憲法19条,憲法21条1項
判旨
検察官による公訴の提起が思想・表現の自由を封殺する意図で行われたとは認められない場合、検察官の裁量権を著しく逸脱し公訴権を濫用したものとはいえない。
問題の所在(論点)
検察官による公訴提起が、特定の思想や表現を封殺する意図に基づくものであった場合に、検察官の裁量権の逸脱として公訴権の濫用が認められるか。
規範
検察官による公訴の提起が、憲法14条(法の下の平等)や憲法19条・21条(思想・表現の自由)を侵害するような不当な目的で行われ、公訴提起に関する検察官の裁量権の範囲を著しく逸脱した場合には、公訴権の濫用として違法となる。
重要事実
被告人が「アイヌ問題」に関連する活動等を行い、これに関連して起訴された事案において、被告人側は、本件公訴の提起が被告人の思想・表現の自由を封殺する意図でなされたものであり、憲法14条、19条、21条に違反し、公訴権の濫用にあたると主張して上告した。
あてはめ
記録に照らしても、本件の公訴提起が被告人の思想・表現の自由を封殺する意図でなされたものとは認められない。したがって、本件における検察官の起訴措置が、公訴提起に関する裁量権の範囲を著しく逸脱し、公訴権を濫用してなされたものとは認められない。
事件番号: 昭和32(あ)3258 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
町村合併によつて新たに成立した町の町役場戸籍課長兼広報宣伝係である地方公務員が、その町の分町活動の活溌化に対抗し町を育成一本化するため分町反対派の町議会議員有志の結成した町育成本部なる団体の依頼により、町村合併による大町村の有利な所以を宣伝放送する行為は、地方公務員法第三五条及び第三六条に違反しない
結論
本件公訴提起は公訴権の濫用にはあたらず、適法である。
実務上の射程
公訴権濫用論について、検察官の広範な裁量を認めつつも、差別的取扱い(憲法14条)や不当な目的(表現の自由の封殺等)がある場合には裁量逸脱となり得ることを示唆している。答案上は、公訴棄却(刑訴法338条4号)の可否を論じる際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)254 / 裁判年月日: 昭和57年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別件逮捕・勾留の違法性が主張されたとしても、原判決が証拠の信用性判断の過程でその目的の存否に言及したにとどまる場合には、捜査自体の憲法適合性を判断したものとはいえず、違憲を理由とする適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕・勾留された際、その目的が不当であったとして弁護人が違…
事件番号: 昭和27(あ)4864 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
昭和二六年四月当時佐賀県a町大字b字c駐在所勤務の巡査に対し同駐在所附近で「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「……たしかに、Aは売国奴の番犬だ!我々愛国者人民は近き将来に必ず勝利するのだ、かかる売国奴とその手先どもの行為は、来るべきあの有名な人民裁判によつて明らかにサバカレ処断されるであろう……」と書いた謄写…
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…
事件番号: 昭和50(あ)1861 / 裁判年月日: 昭和51年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意における憲法違反等の主張が、原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原判決及び一審判決の判断に、憲法37条1項(被告人の権利)や82条(裁判の公開)の違反、および判例違反があるとして上告を申し立てた事案。しかし、…