執行猶予取消決定が猶予期間内に送達された以上特別抗告期間中に猶予期間が満了しても原決定を取り消すべきものではない
刑法26条,刑訴法424条
判旨
執行猶予取消の決定が猶予期間経過前に本人に告知されれば、その時点で取消の効力が生じる。たとえその後の不服申立期間中に猶予期間が経過したとしても、決定の効力に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予取消決定が猶予期間内に告知された場合において、不服申立期間中に猶予期間が経過したとき、当該取消決定の効力は維持されるか。期間経過による刑の言渡しの失効との関係が問題となる。
規範
執行猶予の取消決定は、猶予期間内に裁判の告知がなされることによりその効力を生ずる。一度有効に取消の効力が生じた以上、その後の抗告提起期間中に猶予期間が満了したとしても、既になされた決定の効力が遡及的に消滅したり、取り消されるべき事由となったりすることはない。
重要事実
申立人に対し執行猶予の取消決定がなされ、その決定は執行猶予期間が経過する前に申立人に告知された。申立人はこの決定に対し特別抗告を申し立てたが、その抗告提起期間中に執行猶予期間が経過した。申立人は、期間経過により刑の言渡しが効力を失う(刑法27条)ことを理由に、取消決定の効力を争った。
あてはめ
本件において、原決定(取消決定)は執行猶予期間の経過前に申立人に対して告知されている。この告知により、執行猶予取消の効果は適法に発生したといえる。その後の特別抗告提起期間中に猶予期間が経過した事実は、既に発生した取消の効力を左右するものではない。したがって、期間満了をもって原決定を取り消すべき理由とはならないと解される。
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…
結論
執行猶予期間経過前に取消決定が告知されている以上、その後の期間経過は決定の効力に影響しない。本件抗告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予の取消手続における「期間内」の判断基準が「告知時」にあることを明示した射程の長い判例である。答案上は、刑法27条の「猶予の言渡しを取り消されることなく……経過したとき」の意義を検討する際、裁判の確定時ではなく告知時を基準とする根拠として用いる。
事件番号: 昭和50(し)109 / 裁判年月日: 昭和51年2月20日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に告知されたことにより、執行猶予云渡の取消の効果が発生したものであつて、本件特別抗告係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき事由とはならない。
事件番号: 昭和55(し)83 / 裁判年月日: 昭和55年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予言渡しの取消決定に対する即時抗告棄却決定が、執行猶予期間の経過前に申立人に告知されたときは、その時点で執行猶予取消の効果が発生する。したがって、その後特別抗告の提起期間中に執行猶予期間が経過したとしても、既になされた取消決定等の効力に影響を及ぼすものではない。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和56(し)56 / 裁判年月日: 昭和56年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の係属中に猶予期間が満了した場合であっても、決定告知時に期間が満了していなければ、決定の効力は失われず、抗告審は裁判を継続できる。 第1 事案の概要:本件において、原裁判所による執行猶予取消決定の告知が行われたのは昭和56年4月7日であり、この時点では執行猶予期間は…