業過、酒酔、無免許の罪数判断に誤りがあるが四一一条を適用しないとされた事例
刑法45条
判旨
酒酔い運転の罪と業務上過失致死傷罪は、前者が後者の実行行為を包含する関係にあるため、刑法54条1項前段の観念的競合となる。一方で、無免許運転の罪とこれらの罪は、別個の独立した行為と解されるため、併合罪(同法45条前段)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
酒酔い運転罪、業務上過失傷害罪、および無免許運転罪の三罪間の罪数関係が如何に解されるべきか。
規範
1. 1個の行為が2個以上の罪名に触れる「観念的競合」(刑法54条1項前段)にあたるかは、自然的観察のみならず法的評価も含め、行為の主要部分が重なり合っているかにより判断する。 2. 複数の罪が独立した別個の動機や態様に基づく場合は、併合罪(刑法45条前段)となる。
重要事実
被告人は、酒に酔った状態で自動車を運転し(酒酔い運転)、その過程で業務上の注意を怠り交通事故を起こして他人に傷害を負わせた(業務上過失傷害)。さらに、被告人は運転免許を受けずに当該車両を運転していた(無免許運転)。第一審は、業務上過失傷害と酒酔い運転を観念的競合、これらと無免許運転を併合罪とした。
あてはめ
1. 酒酔い運転罪と業務上過失傷害罪について:酒酔い運転という一つの運転行為の過程で過失傷害が発生している。酒酔い状態での運転という危険な行為が過失の主要な内容を構成し、実行行為が重なり合っているといえるため、観念的競合と解するのが相当である。 2. 無免許運転罪との関係について:無免許運転は、運転免許を持たないという継続的な法的状態に関連する罪であり、特定の事故発生や酒気帯び状態とは別に成立する性質を持つ。したがって、他の二罪とは別個の独立した行為として、併合罪の関係に立つといえる。
事件番号: 昭和48(あ)1969 / 裁判年月日: 昭和50年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒酔い運転の罪と、その運転中に行われた業務上過失致死傷の罪とは、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合として、観念的競合(刑法54条1項前段)の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人は、酒に酔った状態で自動車を運転し(酒酔い運転)、その運転継続中に注意義務を怠って人身事故を起こし、他者に傷害を負わ…
結論
業務上過失傷害罪と酒酔い運転罪は観念的競合となり、これらと無免許運転罪は併合罪となる。
実務上の射程
交通犯罪における罪数処理の基本的枠組みを示す。答案上では、特に「酒酔い」という主観・態様的要素が過失運転の構成要素と重なる点を強調し、他方で「無免許」という属性的要素は別個の行為として切り分ける論理に活用できる。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。
事件番号: 昭和45(あ)2554 / 裁判年月日: 昭和46年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒酔い運転の罪と業務上過失傷害罪との罪数関係につき、前者の実行行為たる自動車の運転行為自体が後者の注意義務違反(過失)の内容をなす場合には、刑法54条1項前段により観念的競合と解すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、飲酒により正常な運転ができないおそれがある状態で普通乗用自動車を運転した(酒…
事件番号: 昭和48(あ)2132 / 裁判年月日: 昭和49年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上過失傷害罪と酒酔い運転の罪は、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合に該当し、刑法54条1項前段により観念的競合の関係にある。被告人に不利益な変更を求める上告趣意は不適法として退けられる。 第1 事案の概要:被告人は酒に酔った状態で自動車を運転し(酒酔い運転)、その運転走行中に注意義務を怠っ…
事件番号: 昭和49(あ)2250 / 裁判年月日: 昭和50年5月27日 / 結論: 棄却
運転技術が未熟でありしかも酒酔いのため自動車の運転を避けるべき注意義務があるのにこれを怠り、あえて運転を開始した重大な過失により、運転開始後約一〇〇メートル進行した地点で酒の酔いと運転技術未熟のため的確なハンドル操作ができず衝突事故を起こし同乗車に傷害を負わせた場合、道路交通法六五条一項、一一七条の二第一号の酒酔い運転…