起訴されていない犯罪事実を、本件犯行の動機、態様の判示のため指摘したものと認められた事例
判旨
起訴されていない犯罪事実(余罪)を、本件犯行の動機や態様などの情状を認定するための資料として指摘することは、余罪を実質的に処罰する趣旨でない限り、刑訴法の許容する範囲内である。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、起訴されていない犯罪事実(余罪)を判決文中で指摘することが、不当な余罪認定として違法となるか(刑訴法256条、335条等に関連)。
規範
裁判所が判決において起訴されていない事実(余罪)を認定することは、それが本件犯行の動機、態様、経緯などのいわゆる犯情を明らかにするために必要な範囲内で行われ、かつ、その余罪を実質的に処罰する目的(余罪認定による刑の加重)でない限り、許容される。
重要事実
被告人が起訴された犯罪事実以外の事実(余罪)について、原判決が判示の中で言及した。弁護人は、これが起訴されていない犯罪事実を余罪として認定したものであり、判例に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決が所論の事実を指摘したのは、本件犯行の動機や態様を判示するためであったと認められる。これは、余罪そのものを独立した犯罪として処罰したり、余罪があることを理由に不当に重い刑を科したりする趣旨ではない。したがって、犯行状況を具体化するための補足的な言及にとどまるものと解される。
結論
原判決の事実に係る指摘は、起訴されていない犯罪事実を余罪として処罰の対象に認定したものではなく、本件の犯情を認定するための資料としたに過ぎないため、適法である。
実務上の射程
量刑判断において「余罪」をどう扱うかという論点で活用する。余罪を刑の加重(処罰)に用いることは禁止されるが、本件犯行自体の悪質性(動機・態様)を評価する際の「情状」として言及することは許容されるという限界を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和63(あ)1360 / 裁判年月日: 平成元年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決の余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に当該余罪を処罰する趣旨で考慮される場合は憲法31条等に反するが、単なる情状として考慮されるにとどまる限りは許容される。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、第一審判決が、起訴されていない別個の犯罪事実(いわゆる余罪)を事実として認定し、これを量…
事件番号: 昭和53(あ)2243 / 裁判年月日: 昭和54年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみでいわゆる余罪を認定した場合であっても、それが実質的に当該余罪を処罰する趣旨で量刑の資料に用いられたものでない限り、憲法31条および38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実以外の余罪についても自白しており、原審はその自白に基づいて余罪の存在を認定した上で、量刑の…