覚せい剤譲渡に営利目的を認定しながら営利犯規定を適用しなかつた違法と刑訴四一一条
判旨
営利の目的がある事実を認定しながら、営利目的の罰則規定の適用を遺脱した判決であっても、その違法が著しく正義に反すると認められない限り、職権による破棄を要しない。
問題の所在(論点)
事実認定において「営利の目的」があることを明示しながら、当該要件に対応する罰則規定の適用を遺脱した判決について、刑訴法411条に基づき職権で破棄すべきか。
規範
上告審において、原判決に法令の適用を遺脱した違法がある場合であっても、刑訴法411条を適用して職権で判決を破棄すべきか否かは、当該違法が著しく正義に反すると認められるかという観点から決せられる。
重要事実
第一審判決は、被告人による覚せい剤譲渡の事実につき、営利の目的があることを認定・判示していた。しかし、法律適用の段階において、当時の改正前覚せい剤取締法41条の2(営利目的の譲渡罪)の適用を遺脱し、単純譲渡罪として処断した(あるいは罰則の選択を誤った)。
あてはめ
本件では、判決文が事実として営利の目的を認定しているにもかかわらず、改正前覚せい剤取締法41条の2の適用を欠いた違法が存在する。しかし、上告審において被告人側の主張は量刑不当にとどまるものであり、当該法令適用の遺脱という形式的違法を考慮しても、なお原判決を維持することが著しく正義に反するとまでは評価できない。
結論
本件の法令適用遺脱の違法は、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和48(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和48年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人にのみ不利な法令適用の誤りがある場合であっても、被告人が上告した事件においては、不利益変更禁止の原則等の趣旨に鑑み、職権による破棄自判をすべきものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が量刑不当を理由として上告した事案。第一審判決は、被告人に累犯加重の原因となる前科があることを認めなが…
実務上の射程
判決における「理由不備」や「法令適用の誤り」が認められる場合であっても、直ちに破棄自判・差し戻しがなされるわけではない。411条の「著しく正義に反すると認めるとき」の判断基準において、認定された事実と適用された条文の不整合が、実質的な処罰の妥当性を著しく損なわない限りは原判決が維持され得ることを示す。
事件番号: 昭和45(あ)1222 / 裁判年月日: 昭和45年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に法令適用の誤りがある場合であっても、犯行の態様その他諸般の事情を総合し、当該違法が「著しく正義に反する」と認められないときは、上告棄却を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷害罪(第一)および道路交通法違反の各罪(第二ないし第四)を犯した。第一審は、道交法70条の安全運転…
事件番号: 昭和44(あ)557 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、裁判所は刑法6条及び10条を適用すべきであるが、判決の文脈から改正前の軽い刑を適用したと解される場合は、当該不備は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失傷害罪および道路交通法違反の罪に問われた事案において、第一審判決後、業務上過失傷害…
事件番号: 昭和44(あ)1360 / 裁判年月日: 昭和45年5月22日 / 結論: 棄却
量刑不当の所論について考えるに、本件事故当時における被告人の飲酒酩酊の程度、被告人には酩酊運転一件を含む道路交通法違反五件の罰金の前科があること等の情状にかんがみれば、必ずしも原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
事件番号: 昭和50(あ)510 / 裁判年月日: 昭和50年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されないが、被告人の性格、経歴、犯行の動機、態様、目的等の情状を推知するための資料とすることは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された犯罪事実以外の事実(余罪)について、原判決が量刑上考慮したことに対し、弁護人は、これが実…