量刑不当の所論について考えるに、本件事故当時における被告人の飲酒酩酊の程度、被告人には酩酊運転一件を含む道路交通法違反五件の罰金の前科があること等の情状にかんがみれば、必ずしも原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
業務上過失傷害道路交通法違反(酩酊運転)被告事件について量刑不当の上告趣意に対し必ずしも原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められないとされた事例
刑訴法411条2号,刑法211条
判旨
飲酒酩酊による業務上過失傷害事件において、高度な酩酊状態での運転や同種前科等の犯情の悪さを重視し、実刑判決を維持した原判決を正当とした。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法411条2号にいう「刑の量定が甚だしく不当である」場合に該当し、原判決を破棄すべきか。
規範
刑の量定が著しく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるか否か(刑訴法411条2号)は、被告人の飲酒酩酊の程度、前科等の犯情、及び示談や社会的制裁等の一般情状を総合考慮して判断する。
重要事実
被告人は高度の酩酊状態(呼気1L中2.00mg)で乗用車を運転し、追突事故を起こして被害者に全治約80日の傷害を負わせた。被告人には酩酊運転1件を含む道路交通法違反5件の罰金前科があった。一方で、被告人は被害者と示談し、87万余円の賠償を支払い、被害者も処罰を望まない意向を示していた。また、新聞社支局長の職を解かれる等の社会的制裁も受けていた。
事件番号: 昭和45(あ)1222 / 裁判年月日: 昭和45年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に法令適用の誤りがある場合であっても、犯行の態様その他諸般の事情を総合し、当該違法が「著しく正義に反する」と認められないときは、上告棄却を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷害罪(第一)および道路交通法違反の各罪(第二ないし第四)を犯した。第一審は、道交法70条の安全運転…
あてはめ
本件では、被告人のアルコール保有量が極めて高く、運転が極めて危険な状態にあったこと、および酩酊運転の前科を含む累犯的傾向が認められることは、量刑上極めて重く評価されるべき犯情である。示談の成立や社会的制裁といった被告人に有利な情状を考慮しても、これら犯情の悪さを覆すに足りる特段の事情とはいえず、懲役1年の実刑に処した原判決が著しく正義に反するとは認められない。
結論
被告人の上告を棄却し、懲役1年の実刑を維持する。
実務上の射程
量刑不当を理由とする職権破棄(411条2号)の基準を示した事例。特に飲酒運転事犯において、被害弁償等の一般的情状よりも、酩酊の程度や前科といった犯情(行為責任)が重視される傾向を裏付けるものとして活用できる。
事件番号: 昭和50(あ)1700 / 裁判年月日: 昭和50年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない余罪を量刑の資料として考慮することは、それが単なる被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的等の情状を推知するための資料にとどまる限り許容される。 第1 事案の概要:被告人が自動車を運転し交通事故を起こした等の本件被告事件において、原判決は量刑の判断にあたり、被告人が飲酒の影響が残ってい…
事件番号: 昭和43(あ)1424 / 裁判年月日: 昭和44年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】飲酒の影響により前方注視が困難な状態で運転を開始し事故を起こした場合、運転を回避し事故を防止すべき業務上の注意義務を怠ったものとして、業務上過失致死傷罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は飲酒後に自動車を運転したが、その際、酔いのため確実な前方注視が困難な状態となっていた。被告人はそのまま進行…
事件番号: 昭和43(あ)2640 / 裁判年月日: 昭和44年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の酒酔い運転罪の成立には、呼気中のアルコール保有量のみならず、被告人の身体的・精神的状況等を総合して正常な運転ができないおそれがある状態であることの認識が必要である。 第1 事案の概要:被告人がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転したとして、道路交通法…
事件番号: 昭和44(あ)194 / 裁判年月日: 昭和44年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、各罪につき懲役刑と禁錮刑という異なる種類の刑を選択した場合、刑法47条但書により、処断刑の長期は各罪の法定刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失傷害罪(旧刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1号)を犯した…