執行猶予の要件を欠く被告人に執行猶予の判決を言い渡した原判決が刑訴法四一一条一号により破棄された事例
刑訴法411条1号,刑訴法25条1項
判旨
禁錮以上の刑の執行を終えてから5年を経過していない者に対し、刑法25条1項を適用して刑の執行を猶予することは、法令の解釈適用を誤った違法な判決である。このような重大な法令違反がある場合、刑訴法411条1号に基づき、著しく正義に反するものとして原判決を破棄すべきである。
問題の所在(論点)
刑法25条1項の執行猶予の欠格事由(禁錮以上の刑の執行終了から5年以内)に該当する者に対し、執行猶予を付した原判決の適法性、および刑訴法411条1号による破棄の妥当性。
規範
刑法25条1項の執行猶予の要件において、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者(1号)」または「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日…から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者(2号)」であることが必要である。この欠格事由に該当する場合、執行猶予を付すことはできず、これに反する判決は法令の解釈適用の誤り(刑訴法411条1号)となる。
重要事実
被告人は昭和46年4月に業務上過失傷害罪により禁錮4月の判決が確定し、同年9月から刑の執行を受け、昭和47年1月26日にその執行を終えた。その後、被告人が本件の罪を犯し、原審(昭和49年3月25日)は、被告人を懲役1年に処した上で3年間の執行猶予を言い渡した。しかし、前刑の執行終了から5年が経過していなかった。
あてはめ
被告人は、昭和47年1月26日に禁錮刑の執行を終えており、原審判決の時点では未だ5年を経過していないことが明白である。したがって、被告人は刑法25条1項の執行猶予を付しうる要件を満たしていない。それにもかかわらず執行猶予を付した原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある。刑の減軽等の情状を考慮しても、執行猶予の要件を欠くことは法的拘束力が強く、これを是正しなければ著しく正義に反すると解される。
結論
原判決及び第一審判決には刑法25条1項の解釈適用を誤った違法があるため、これらを破棄する。被告人を懲役8月に処し、実刑とする自判を行う。
実務上の射程
実務上、執行猶予の要件(前科の有無と期間)は形式的に判断されるべき事項であり、裁判所の裁量の余地はない。答案上では、執行猶予の成否が論点となる際、刑法25条の条文要件を厳格に当てはめる際の根拠となる。また、上告審において職権で破棄すべき「著しく正義に反する」法令違反の具体例としても活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)4 / 裁判年月日: 昭和25年6月23日 / 結論: 破棄差戻
本件は第一審で昭和二三年六月一七日被告人に對し懲役一年三年間執行猶豫の有罪判決を言渡したところ、被告人は控訴の申立をなし、第二審檢事は附帶控訴をし、原審は審理の結果昭和二四年一一月一七日被告人に對し懲役六月、三年間執行猶豫の判決を言渡したものであることは記録上明らかである。ところが原審昭和二四年一一月一〇日の公判調書を…