広島県庁正面玄関前構内におけるA事件についての再上告審決定
判旨
地方自治体の条例が定める集団示威運動の許可制は、不許可事由が厳格に制限されている限り実質的に届出制と異ならず、無許可での開催はそれ自体で実質的違法性を有するため、これに対する刑罰規定は憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
集団行進を許可制とし、無許可開催を処罰する条例の規定が、表現の自由を保障する憲法21条に違反しないか。また、厳格に制限された許可制が無許可行為の可罰的違法性にどう影響するか。
規範
公共の安全と秩序を維持するために設けられた集団運動の許可制は、許可が義務付けられ、不許可の場合が厳格に制限されている場合には、その実質において届出制と異なるところがない。したがって、所定の許可申請手続を経ないでした集団運動の主催者を処罰する規定は、表現の自由(憲法21条)を侵害するものではなく、無許可で行われた行為はそれ自体において実質的違法性を有する。
重要事実
被告人は、広島県条例(広島県集団示威運動、集団行進及び集会に関する条例)に基づき許可が必要とされる集団行進を、所定の申請手続を経ることなく無許可で主催した。また、当該行進は広島県庁正面玄関前構内で行われた。被告人は、当該条例の罰則規定が憲法21条(表現の自由)や28条(労働基本権)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件条例4条および14条1号は、公共の安全維持を目的として無許可の主催者を処罰するものである。判例によれば、本条例のように許可が義務付けられ不許可事由が厳格なものは実質的に届出制と同視できる。このため、申請を怠った無許可行進は、それ自体が法秩序を乱す実質的違法性を備えている。さらに、県庁正面玄関前構内は「屋外の公共の場所」に該当し、労働組合法上の正当な行為にも当たらないため、処罰を免れる理由はない。
事件番号: 昭和28(あ)4841 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 棄却
昭和二五年広島市条例第三二号集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法第二一条、第一一条、第一三条に違反しない。
結論
本件条例の許可制および罰則規定は憲法21条に違反せず、被告人を処罰した原判決の判断は正当である。
実務上の射程
地方公共団体の公安条例における許可制の合憲性を検討する際、それが実質的な届出制として機能しているか(不許可事由が厳格か)を基準とする判例理論を再確認するものである。答案上は、集団行進の自由が公共の福祉により合理的な制限を受ける根拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(あ)1790 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 破棄差戻
昭和三六年広島県条例第一三号集団示威運動、集団行進及び集会に関する条例四条にいう「屋外の公共の場所」とは、そこにおいて集団示威運動等が行なわれると、公共の安全と秩序に対し危険が及ぶおそれのあるような、道路、公園、広場にも比すべき場所、すなわち、現実に一般に開放され、不特定多数の人が自由に出入し、利用できる場所を指すもの…
事件番号: 昭和46(あ)499 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
一 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付するについては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動自体を不許可にするための要件が存在することを必要としない。 二 集団行動につき公安委員会が付した許可条件に違…
事件番号: 昭和27(あ)610 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
昭和二四年徳山市条例第六〇号行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法第一二条、第二一条、第三一条に違反するものではない。
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…