死刑事件
判旨
死刑判決の正当性について、犯行の計画性、殺傷の結果、残忍冷酷な犯行態様等の諸般の情状を総合考慮し、被告人の刑責が誠に重いといえる場合には、死刑の科刑はやむを得ないものとして是認される。
問題の所在(論点)
死刑の科刑が、憲法36条(残虐な刑罰の禁止)に違反せず、また量刑不当として刑訴法411条により破棄すべき事由に当たらないか、その判断基準が問題となる。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の動機、②犯行の計画性、③態様(残忍性)、④結果の重大性、⑤被害者の感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢・前科、⑧犯行後の情状等、記録に現れた諸般の事情を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点および一般予防の見地からやむを得ないといえる場合に認められる。
重要事実
被告人は、白昼、婦女2名が留守番をしていた山林の家庭を狙い、計画的に侵入した。全く無抵抗の被害者らのうち1名を殺害し、もう1名も殺害しようとしたが未遂に終わった。犯行時、互いに他方の生命をかばい合って哀願する被害者らに対し、被告人は極めて残忍冷酷な態度で臨んでいた。
あてはめ
本件犯行は、白昼の住居侵入を伴う計画的なものであり、1名を殺害し1名を未遂に及ぼした結果は極めて重大である(結果・計画性)。特に、互いに命を乞う被害者らに対し一切の容赦なく犯行を継続した態度は、残忍冷酷の極みといえる(態様)。これらの情状を総合すれば、被告人の刑事責任は誠に重く、罪刑の均衡を失しているとはいえない。
結論
原審の維持した第一審判決の死刑の科刑はやむを得ないものとして是認でき、上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(あ)3686 / 裁判年月日: 昭和27年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量定が争われた事案において、諸般の犯情を調査した結果、被告人に対し死刑を選択することは、真にやむを得ないものと認められる場合には適法である。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に関し、死刑の判決が下された。これに対し、弁護人が訴訟法違背および量刑不当を理由として上告を申し立て、死刑の選択が不…
実務上の射程
死刑の量刑判断において、後に示される「永山基準(最判昭58.7.8)」へと繋がる考慮要素の原型を示している。答案上は、本件のように犯行の計画性や態様の冷酷さが際立つ事案では、被害者数のみならず、これらの質的要素を強調して死刑の正当性を基礎付ける一助となる。
事件番号: 平成2(あ)1110 / 裁判年月日: 平成8年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、やむを得ない場合に認められる。自首や反省等の被告人に有利な事情を考慮しても、犯行の計画性や残虐性が著しい場合には死刑判決を是認できる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…
事件番号: 昭和58(あ)140 / 裁判年月日: 平成元年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、結果の重大性、遺族の被害感情等の罪質及び情状を総合的に考慮し、その罪責がまことに重大であって、死刑の科刑がやむをえないと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、機会を異にして、手向かう術のない婦女2名を殺害した。各犯行は冷酷無情かつ残忍な態…
事件番号: 平成27(あ)1585 / 裁判年月日: 平成30年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、殺害の計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を考慮しても、犯行態様の残虐性、結果の重大性、動機に酌量の余地がない場合には、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罰金刑の資金を得るため、金品窃取目的でA方に侵入。物色中に発見されたため強取を決意し、A(57歳…