判例と相反する判断をしたものでないことがきわめて明らかであるとして、判例違反の主張が不適法とされた事例
判旨
所得税の過少申告による脱税犯において、真実の所得を秘匿して内容虚偽の確定申告書を提出する行為は、それ自体が「詐偽その他不正の行為」に該当する。
問題の所在(論点)
所得税の過少申告逋脱犯における「詐偽その他不正の行為」の意義。特に、虚偽の申告書を提出する行為それ自体が「不正の行為」に該当するか否か。
規範
所得税法等に規定される「詐偽その他不正の行為」とは、税の徴収を免れるために行われる、社会通念上不正と認められる一切の作為を指す。過少申告逋脱犯においては、真実の所得を隠蔽し、殊更に虚偽の内容を記載した申告書を提出する行為そのものが、この「不正の行為」の典型を構成する。
重要事実
被告人は、所得税の確定申告に際し、真実の所得金額を秘匿した。その上で、本来の所得よりも過少な金額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務当局に提出し、正当な税額の納付を免れようとした。
あてはめ
本件において被告人は、真実の所得を秘匿するという隠蔽の意図に基づき、客観的に事実に反する内容虚偽の申告書を作成・提出している。このような行為は、適正な課税権の行使を直接的に妨害するものであり、単なる申告漏れとは一線を画する。したがって、過少申告という形式をとってはいるものの、その実態は「詐偽その他不正の行為」に当たると評価される。
結論
真実の所得を秘匿して内容虚偽の所得税確定申告書を提出した行為は、「詐偽その他不正の行為」に該当し、過少申告逋脱犯が成立する。
実務上の射程
申告納税制度の下では、納税者が虚偽の申告を行うこと自体が制度の根幹を揺るがす背信的行為であるため、積極的な工作(帳簿隠滅等)を伴わなくとも、殊更な虚偽申告があれば「不正の行為」と認定され得る。答案上は、脱税犯の成立要件を検討する際の具体的判断基準として用いる。
事件番号: 昭和56(あ)183 / 裁判年月日: 昭和56年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】税法違反の罪における「不正の行為」について、虚偽過少申告行為はそれ自体が「不正の行為」に該当し、納税義務を免れるための積極的な工作を必要としない。 第1 事案の概要:被告人は、所得税法違反等の罪に問われた事案において、虚偽の内容に基づき本来の所得よりも過少な金額を申告した。弁護人は、先行判例を引用…