所得税法第六九条第一項前段の犯罪事実については、逋脱の犯意や逋脱行為にとどまらず、その行為による免脱した所得税額をも認定判示することを要する。
所得税法第六九条第一項前段の罪の判示方法。
所得税法69条1項
判旨
所得税逋脱罪の成立には、犯意や行為だけでなく免れた税額の認定が必要であり、所得金額が一定額を超えていたとするのみで具体的な逋脱額を特定しない認定は、理由不備または審理不尽として違法である。
問題の所在(論点)
所得税逋脱罪(現行の所得税法238条1項、旧法69条1項)の犯罪事実の認定において、免れた所得税額(逋脱税額)を具体的に確定する必要があるか。
規範
所得税逋脱罪は、納税義務者が詐偽その他不正の行為によって納税義務の履行を怠り、その結果として税金を免れることで成立する。したがって、その犯罪事実の認定においては、逋脱の犯意や行為の存在にとどまらず、その行為により履行を免れた具体的な所得税額まで認定することを要する。
重要事実
被告人が昭和29年度の所得税を逋脱したとして起訴された事案。原判決は、被告人の犯意および不正行為を認めたが、逋脱の結果については「所得金額は88万2000円を超えていた」と判示するにとどまり、具体的な逋脱税額を明示しなかった。また、期首の手持現金等について「相当額」の存在を推認しながら、期末の金額や具体的な数値の確定を回避した状態で所得金額を算出した。
あてはめ
原判決は所得金額が一定額を超えていたとするのみで、逋脱に係る所得税額を判示していない。これは逋脱という結果の認定として不確定かつ不十分であり、理由不備の違法がある。また、期首の現金等を「相当額」としながら金額を確定していないため、計算上、被告人の所得が確定申告額を下回る可能性(被告人に有利な事情)が排除されておらず、審理を尽くしたとはいえない。
結論
具体的な逋脱税額を認定していない原判決には理由不備および審理不尽の違法があるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
逋脱罪が「結果犯」であることを前提に、既遂時期や処罰範囲を画定するための犯罪事実の特定レベルを論じる際に用いる。答案上では、逋脱額が構成要件的要素であることを明示し、概括的な認定ではなく、具体的な税額計算の基礎となる事実を認定すべきという主張の根拠となる。
事件番号: 昭和47(あ)1588 / 裁判年月日: 昭和49年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所得税の過少申告による脱税犯において、真実の所得を秘匿して内容虚偽の確定申告書を提出する行為は、それ自体が「詐偽その他不正の行為」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、所得税の確定申告に際し、真実の所得金額を秘匿した。その上で、本来の所得よりも過少な金額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税…