判例違反の主張が判例不適切及び欠前提とされた事例
判旨
税法違反の罪における「不正の行為」について、虚偽過少申告行為はそれ自体が「不正の行為」に該当し、納税義務を免れるための積極的な工作を必要としない。
問題の所在(論点)
所得税法等に規定される「偽りその他不正の行為」の意義。特に、虚偽の過少申告行為自体が「不正の行為」に該当するか、あるいはそれ以外に積極的な隠蔽・装飾等の工作を必要とするか。
規範
税法上の脱税罪における「不正の行為」とは、虚偽の過少申告を行うこと自体を指す。したがって、申告に際して二重帳簿の作成や証拠隠滅等の積極的な欺罔・工作を別途伴うことを要せず、虚偽の内容を記載した申告書を提出して税を免れる意思があれば、それ自体が不正行為にあたる。
重要事実
被告人は、所得税法違反等の罪に問われた事案において、虚偽の内容に基づき本来の所得よりも過少な金額を申告した。弁護人は、先行判例を引用しつつ、単なる虚偽過少申告のみでは「不正の行為」には当たらず、格別の積極的工作が必要であると主張して上告した。なお、具体的な所得金額や申告の時期等の詳細は本決定文からは不明である。
あてはめ
最高裁は、先行する第三小法廷判決(昭和48年3月20日)を引用し、虚偽過少申告行為はそれ自体が不正行為に当たる旨を判示している。本件においても、被告人が行った虚偽の申告行為は、税の公正な賦課を免れるための行為として、法が禁じる「不正の行為」の類型に含まれる。弁護人が主張するような、積極的な工作を必須とする解釈は採用されない。
結論
虚偽過少申告行為はそれ自体が「不正の行為」にあたる。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
行政法・租税法分野だけでなく、刑法上の「欺罔」概念と比較する文脈でも重要である。答案上では、脱税罪の成立要件として「不正の行為」を論じる際、実行行為としての虚偽申告そのものを捉えれば足り、隠蔽工作の有無は要件ではないことを示す際に活用すべきである。
事件番号: 昭和46(あ)1901 / 裁判年月日: 昭和48年3月20日 / 結論: 棄却
一 所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務署長に提出する行為は、所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六九条一項にいう「詐偽その他不正の行為」にあたる。 二 第一審判決が、被告人を懲役六月および罰金二百万円に処し、罰金を完納しないときは一万円を一日に換算した期間労役場に留置し、裁…