一 だ行進やすわり込みは、集団行動による思想の表現のために不可欠のものではなく、これを禁止しても、思想表現行為としての集団行動の本質的意義と価値を失わしめ憲法上保障される表現の自由を不当に制限することにならないから、このような条件に違反したもののうちどの範囲のものを処罰するかは立法政策の問題にすぎない。 二 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づく公安委員会の条件付与にあたっては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動を不許可にする場合の要件を必要としない。
一 許可条件違反のだ行進及びすわり込みの単なる参加者の処罰と憲法二一条 二 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付与するには集団行動を不許可にする場合の要件をも必要とするか
昭和24年愛知県条例30号(行進又は集団示威運動に関する条例)4条1項,昭和24年愛知県条例30号(行進又は集団示威運動に関する条例)4条3項,昭和24年愛知県条例30号(行進又は集団示威運動に関する条例)5条,憲法21条
判旨
集団行進等に対する公安委員会の許可条件の付与は、思想の表現それ自体を事実上制約する結果とならない限り、不許可処分に必要とされる厳格な要件を要しない。だ行進やすわり込みの禁止といった平穏な実施を求める条件は、表現の自由の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
集団行動の許可に際して付される「条件」の憲法適合性およびその付与要件の程度が問題となる。特に、不許可の場合と同様の「直接的な危険の明白性」という厳格な要件が、条件付与に際しても必要かという点が論点となる。
規範
公安委員会が集団行動の許可に際して付す条件は、それが思想の表現それ自体を事実上制約する結果をもたらすものでない限り、不許可の要件(直接公共の安全を危険ならしめることが明瞭な場合に限るとする要件)まで備える必要はない。集団行動が秩序正しく平穏に行われ、不必要に安寧秩序を脅かさないための条件付与は、表現の自由の本質的な意義を失わせない限り、広く認められる。
事件番号: 昭和46(あ)499 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
一 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付するについては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動自体を不許可にするための要件が存在することを必要としない。 二 集団行動につき公安委員会が付した許可条件に違…
重要事実
被告人は、愛知県公安委員会から「だ行進、停滞その他一般の交通に障害を及ぼすような形態にならないこと」等の条件を付して集団示威行進の許可を受けた。しかし、被告人は他の参加者とともにだ行進およびすわり込みを行い、当該許可条件に違反したとして、愛知県の行進又は集団示威運動に関する条例違反で起訴された。原審は、条件付与の要件を厳格に解した上で被告人を有罪としたため、被告人側が憲法違反等を理由に上告した。
あてはめ
本件で付された(1)四列以下の縦隊、(2)だ行進や停滞の禁止、(3)プラカード等を振り回さない等の条件は、いずれも集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果をもたらすものではない。だ行進やすわり込みは思想表現に不可欠なものではなく、これらを禁止しても表現の自由を不当に制限したとはいえない。したがって、これらの条件には「公共の安全に対して直接危険を及ぼすことが明らか」といった実質的制限が伴う必要はなく、条例の規定に基づき適法に付されたものと解される。
結論
被告人の行為は有効な許可条件に違反するものであり、本件条例を適用して処罰することは憲法21条に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
集団行動の「不許可」には厳格な合憲性判定基準が適用されるが、実施方法に関する「条件付与」については、表現内容の本質を損なわない範囲であれば、不許可時ほどの厳格な要件(明白かつ現在の危険等)は不要であるとする。答案上では、制約の態様(不許可か、付随的な条件か)に応じて審査密度を分ける際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…
事件番号: 昭和48(あ)321 / 裁判年月日: 昭和49年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安保条約の違憲性は、被告人の具体的な行為の違法性判断に影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。また、集団示威運動に関する条例による制約は、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、愛知県条例(行進又は集団示威運動に関する条例)に違反する行為等の罪に問われた。上告審において、弁護…
事件番号: 昭和37(あ)2663 / 裁判年月日: 昭和38年12月6日 / 結論: 棄却
昭和二四年愛知県条例第三〇号(行進又は集団示威運動に関する条例)第五条等が憲法第二一条、第一三条に違反するものでないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかである(昭和二六年(あ)第三一八八号同二九年一一月二四日大法廷判決、刑集八巻一一号一八六六頁・昭和二八年(あ)第四八四一号同三五年七月二〇日大法廷判決、刑集一四巻九…
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…