交通事故の身代り犯人について再審事由を理由に破棄無罪とした事例
刑訴法411条5号,刑訴法435条7号
判旨
被告人が身代わりとして起訴され有罪判決を受けた後、真犯人が自首し被告人に犯人隠避罪が確定した事案において、原判決の維持は著しく正義に反するため、刑訴法411条4号に基づき破棄し、無罪を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
被告人が身代わりとして有罪判決を受けた後、真犯人の存在が確定判決により明らかになった場合、刑訴法411条4号(再審事由・著しい正義反)に基づき原判決を破棄し、被告人を無罪とすることができるか。
規範
上告裁判所は、判決後において再審の請求をすることができる事由(刑訴法435条各号)がある場合であって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、職権をもって原判決を破棄することができる(刑訴法411条4号)。
重要事実
被告人は業務上過失傷害罪等で禁錮5月の第一審判決を受け、控訴棄却された。しかし上告審において、被告人は真犯人Dの身代わりであったことが判明した。Dが自首し、Dには業務上過失傷害罪等で、被告人には別途犯人隠避罪等で有罪判決が確定した。これにより、本件の傷害事故を起こしたのは被告人ではなくDであり、被告人は当時後部座席に同乗していたに過ぎない事実が認められた。
あてはめ
本件では、被告人以外の者が真犯人であるとするDへの有罪判決および被告人への犯人隠避罪の確定判決が存在する。これは刑訴法435条6号に掲げる「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」にあたり、再審請求ができる場合に該当する。被告人が身代わりとして実刑判決を受けるという現状を維持することは、客観的事実に反する処罰を容認することになり、著しく正義に反するといえる。
結論
原判決および第一審判決を破棄する。被告人は無罪。
実務上の射程
上告審において原判決後の新事実(再審事由)に基づき職権破棄自判を行う際のリーディングケース。答案上は、真犯人の出現や虚偽自白の判明等、事実誤認が明白となった際の救済手続として刑訴法411条の適用を論じる際に参照する。
事件番号: 昭和44(あ)1384 / 裁判年月日: 昭和45年6月19日 / 結論: 破棄自判
業務上過失致死事件の犯人として、第一審において有罪の判決を受け、控訴審においても控訴棄却を言い渡された被告人が、右判決に対し上告申立をしたところ、真犯人が警察に自首し、同人に対し業務上過失致死、被告人に対し犯人隠避等の罪による起訴がなされ、これらを有罪とする新たな第一審判決の言渡があり、その公判において取調べられた各証…
事件番号: 昭和52(あ)295 / 裁判年月日: 昭和53年12月15日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】真犯人の身代わりとして起訴され有罪判決を受けた被告人が、上告中に真実を申告し、その後の捜査で真犯人が判明した事案において、刑訴法411条4号及び435条6号(再審事由)に準じて原判決を破棄し、差し戻すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、真犯人Aから身代わりを依頼され、Aが起こした業務上過失傷…
事件番号: 昭和47(あ)2025 / 裁判年月日: 昭和48年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自首が成立する事案においてその認定を誤った判決があっても、諸般の事情を考慮して宣告刑が不当に重いと認められない限り、判決の破棄は要しない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷害および道路交通法違反(救護義務違反)の罪に問われた。被告人は事件後、捜査機関に対して自ら犯罪事実を申告したが、原判決は…