一 ジグザグ行進やうず巻行進は、集団行動による思想の表現のために不可欠のものではなく、これを禁止しても、憲法上保障される表現の自由を不当に制限することにならない。 二 本件集団行動につき、公安委員会が付した各条件は、個々独立の意味を有し、個々に構成要件を補充しているものであるから、被告人は被告人の本件行為と事実上、法律上の関連のない条件の違憲性を争う適格を有しない。
一 ジグザグ行進及びうず巻行進の禁止と表現の自由 二 集団行動につき公安委員会が付した条件の違憲性を争う適格
昭和25年神奈川県条例69号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)3条1項但書,昭和25年神奈川県条例69号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)5条,憲法21条,刑訴砲405条1号
判旨
公安条例に基づく集団行進の許可制は、不許可事由が厳格に制限されている限り実質的な届出制として憲法21条に違反せず、またジグザグ行進等の禁止も表現の自由の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 公安条例が定める集団行動の許可制は、憲法21条の表現の自由に違反しないか(実質的届出制の成否)。 2. ジグザグ行進やうず巻行進を禁止することは、憲法21条の保障する表現の自由を不当に制限するか。
規範
1. 集団行動の許可制であっても、公安委員会が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」以外は許可すべきものとされ、不許可事由が厳格に制限されているならば、その実質は届出制と異ならず憲法21条に反しない。 2. 表現行為としての集団行動において、ジグザグ行進やうず巻行進といった特定の表現形態は、思想の表現のために不可欠なものとはいえず、これらを禁止することは憲法上の表現の自由を不当に制限するものではない。
重要事実
被告人は、神奈川県集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(公安条例)に基づき、集団行進の許可を得たが、その際に付された「かけ足行進」「隊列のことさらな停滞」「ジグザグ行進」「うず巻行進」の禁止等の条件に違反する行動を行ったとして起訴された。被告人は、同条例の許可制自体が憲法21条に違反し、また特定の表現形態(ジグザグ行進等)の禁止も表現の自由を侵害するものであると主張して争った。
事件番号: 昭和45(あ)1495 / 裁判年月日: 昭和50年9月26日 / 結論: 棄却
一 集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和二五年神奈川県条例第六九号)が、三条一項但書において公安委員会が付しうる条件の範囲を具体的に定め、五条において右三条一項但書に基づいて定められた条件に違反した集団行動の主催者等に対して罰則を定めているのは、地方自治法一四条五項の委任の趣旨に反するものではない。 二 集…
あてはめ
1. 神奈川県条例は許可制を採るが、3条により「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」以外は許可が義務付けられている。このように不許可事由が厳格に制限されている以上、実質的には届出制と評価でき、合憲である。 2. 集団行動は思想表現の一態様として憲法上保障されるべき要素を有する。しかし、ジグザグ行進やうず巻行進は交通秩序を乱す行為であり、思想表現のために「不可欠」な手段とは認められない。したがって、公共の福祉による制限としてこれらを禁止しても不当な制限とはいえない。
結論
本件公安条例の許可制およびジグザグ行進等の禁止条件は、憲法21条に違反せず合憲である。被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
集団行進の自由(表現の自由)に関する重要判例である。答案上は、①公安条例の合憲性判断において「実質的な届出制」といえるかという枠組みを提示する際、および②表現の自由の制限において「手段の必要不可欠性」を検討する際の根拠として用いる。特に徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)の流れを汲む判断として位置づけられる。
事件番号: 昭和48(あ)454 / 裁判年月日: 昭和49年5月30日 / 結論: 棄却
一 集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和二五年札幌市条例第四九号)は憲法二一条に違反しない。 二 同条例三条一項但書、五条は憲法三一条に違反しない。
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…
事件番号: 昭和56(あ)1719 / 裁判年月日: 昭和59年1月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例によるデモ行進等の許可制、許可条件の付与、および条件違反に対する罰則規定は、いずれも憲法21条、31条等の諸規定に違反しない。本条例の許可制は実質的に届出制と異ならず、公安委員会の裁量も限定されており、表現の自由の不当な侵害にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条…
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…