多岐にわたる違憲の主張がいずれも不適法とされた事例(東京都公安条例違反)
判旨
東京都公安条例によるデモ行進等の許可制、許可条件の付与、および条件違反に対する罰則規定は、いずれも憲法21条、31条等の諸規定に違反しない。本条例の許可制は実質的に届出制と異ならず、公安委員会の裁量も限定されており、表現の自由の不当な侵害にはあたらない。
問題の所在(論点)
東京都公安条例が定める集団示威運動等の「許可制」および「公安委員会による許可条件の付与」が、憲法21条(表現の自由)や憲法31条(適正手続・罪刑法定主義)に違反しないか。
規範
1. 集団示威運動等に対する許可制は、それが形式上許可制であっても、実質において届出制と異ならない運用がなされる限り、憲法21条に違反しない。2. 条例が公安委員会に条件付与を委任する場合、その要件や範囲が具体的かつ明確に規定されており、恣意的な運用を許さない仕組みであれば、憲法21条および31条に違反しない。3. 条例に基づき付された具体的条件の違反を処罰することは、罰則権限の再委任にはあたらず、地方自治法および憲法31条に抵触しない。
重要事実
被告人らは、東京都公安条例(昭和25年条例第44号)に基づき、公安委員会から条件を付されてデモ行進等の許可を受けた。しかし、実際の行進において「蛇行進」や「フランスデモ」を行い、付された許可条件に違反する行動を指導したとして、同条例5条の条件違反罪に問われた。被告人らは、本条例の許可制自体が表現の自由を侵害する違憲なものであること、条件付与の裁量が漠然不明確であること、および罰則規定が罪刑法定主義に反すること等を主張して争った。
あてはめ
まず、本条例の許可制は、判例の趣旨に照らせば実質において届出制と異なるところがなく、表現の自由を不当に抑制するものではない。次に、公安委員会が付し得る条件の範囲については、条例3条1項但書において具体的に規定されており、公安委員会がほしいままに条件を定めることは許されていないため、明確性の原則に反しない。さらに、条例5条は、あらかじめ条例が定めた条件違反を処罰するものであり、罰則権限を公安委員会に白紙委任したものではなく、地方自治法14条の委任の範囲内といえる。実際の運用においても、特定の思想内容を制限したり、恣意的に権利を阻害したりした形跡は認められない。
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…
結論
東京都公安条例は、憲法19条、21条、28条、31条および地方自治法14条に違反せず、合憲である。
実務上の射程
集団示威運動の規制に関するリーディングケース(新潟県公安条例事件等)の流れを汲む判断であり、実務上は「許可制であっても実質が届出制であれば合憲」という枠組みで用いる。また、条件違反罪の構成要件の明確性や、行政庁への条件付与委任の限界を論じる際の基準としても活用できる。
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…
事件番号: 昭和35(あ)112 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 破棄差戻
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 昭和53(あ)1862 / 裁判年月日: 昭和54年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都集会示威運動等に関する条例における「だ行進」の禁止という許可条件は、その意義が不明確であるとはいえず、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年東京都条例第44号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)に基づき許可された集団行進において、許可条件として付された「だ行進の…
事件番号: 昭和40(あ)1050 / 裁判年月日: 昭和41年3月3日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例第五条は、憲法第三一条に違反しない。 二 右条例第一条の集団行動の許可管掌機関が「公安委員会」から「東京都公安委員会」と改正されても、同条の規定に違反して行われた集団行動の指導者または煽動者を処罰する同条例第五条の刑の廃止があつたものとは認められ…