一 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例第五条は、憲法第三一条に違反しない。 二 右条例第一条の集団行動の許可管掌機関が「公安委員会」から「東京都公安委員会」と改正されても、同条の規定に違反して行われた集団行動の指導者または煽動者を処罰する同条例第五条の刑の廃止があつたものとは認められない。
一 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例第五条の合憲性 二 右条例第一条の改正と刑の廃止の有無
昭和25年東京都条例44号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例1条,昭和25年東京都条例44号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和29年7月1日改正後)1条,昭和25年東京都条例44号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和29年7月1日改正後)5条,憲法31条,警察法(昭和22年法律196号)52条,警察法(昭和22年法律196号)43条,警察法(昭和29年法律162号)38条,警察法(昭和29年法律162号)附則1項,刑訴法337条2号
判旨
東京都公安条例に定める許可申請義務に違反して行われた集団行動は、表現の自由の範囲を逸脱し、暴力に発展する危険性を内包する実質的違法性を有するため、その指導・煽動行為を処罰することは憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
主催者の許可申請義務違反という形式的な不備の下でなされた集団行動が、それ自体として処罰の対象となり得る実質的違法性を有するか。また、その指導・煽動行為を処罰する規定が憲法31条に違反するか。
規範
集団行動(集会、集団行進、集団示威運動)は、本来平穏に行われるべき表現の自由の行使であるが、その性質上、静謐を乱し暴力に発展する危険性のある物理的力を内包している。したがって、公共の安全を維持するために必要な法的規制を受けるものであり、主催者の許可申請義務違反の下でなされた集団行動は、それ自体として実質的違法性を欠くものではない。
事件番号: 昭和35(あ)112 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 破棄差戻
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。
重要事実
被告人らは、昭和25年東京都条例第44号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例、いわゆる東京都公安条例)に基づき必要とされる主催者の許可申請を行わずに、集団行動を実施した。この無許可での集団行動において、当該行動を指導・煽動した行為が同条例5条に抵触するとして起訴された。弁護側は、許可申請義務違反のみでは実質的違法性がなく、これを処罰することは憲法31条の適正手続に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件条例の対象となる集団行動は、表現の自由の行使としての側面を持つ一方で、静謐を乱し暴力に発展し得る危険な物理的力を内包している。先行する大法廷判決の趣旨に照らせば、許可申請という手続を怠って行われた集団行動は、主催者個人の義務違反にとどまらず、集団行動そのものが危険性を帯び、実質的違法性を有すると解される。したがって、これを違法として指導・煽動行為を処罰する規定は、合理的な法的規制として適法である。
結論
主催者の許可申請義務違反の下でなされた集団行動は実質的違法性を有するため、その指導・煽動行為を処罰する本件条例は憲法31条に違反しない。
実務上の射程
公安条例による集団行動の事前規制(届出制・許可制)の合憲性を前提とし、無許可での集団行動自体が実質的違法性を帯びることを確認した判例である。司法試験の答案上は、表現の自由の制約(21条1項)や適正手続(31条)の文脈で、集団行動が持つ特殊的危険性を理由とした規制の合理性を肯定する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和46(あ)729 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: 破棄差戻
被告人らが羽田空港ターミナルビルデイング内国際線出発ロビーにおける参加者約三〇〇名の集団示威運動を指導した場合につき、被告人らの右行為は可罰的違法性を欠き昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…
事件番号: 昭和56(あ)1719 / 裁判年月日: 昭和59年1月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例によるデモ行進等の許可制、許可条件の付与、および条件違反に対する罰則規定は、いずれも憲法21条、31条等の諸規定に違反しない。本条例の許可制は実質的に届出制と異ならず、公安委員会の裁量も限定されており、表現の自由の不当な侵害にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条…
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…